「ね・・・ねえ、ユウナちゃん。なんか・・・タイヘンなコトになっちゃってない?」

「・・・見ればわかんじゃん。ってかイチイチアタシに聞かないでよ・・・」


愛澤悠奈と、グローリーグラウンドのフェアリー、レイアは目の前の光景を見て、その尋常ならざる雰囲気に思わずそんなやり取りをした。






「え・・えっとぉ・・とりあえず、確認させてくださいね。まず・・イリーナ・・さん?」

「ハイ、イリーナ・グランディスと申します。」

「で、どちらからいらっしゃったって・・・言われましたっけ?」

「ハイ、グローリーグラウンドの王都、レインヴァードから来ました」

「ハイ!ストップ!」

「はい?なんでしょう?」

「・・・その・・・グローリーグラウンドっていうのは・・・もう1度聞きますけど・・・アメリカ?それともイギリス?どちらの国にあるの?街?島?」

「まあ、グローリーグラウンドはグローリーグラウンドですわ」


「あー・・ヴァネッサさん、もうそろそろヤメトケ。多分このねーちゃんマジだわ」

もう何度目かのこの応対を見ていた彼、草薙京は目の前ににこやかに座っているイリーナの顔を見て、混乱の汗ダラダラ状態のヴァネッサに静かに言い放った。


ところは新選グループが経営する高級ホテルの一室。

子ども達の一時行方不明騒動ですっかり祝勝会の酔いが醒めてしまったしまったヴァネッサは、ふと悠奈たちの背後に立っていた若い美女に声をかけられてその存在に気付いた。

どうやら子ども達の知り合いのようだがこの女性、一体何者なのだろうか?とその事を聞き出そうとしたところ。







「はじめまして。グローリーグラウンドの王都、レインヴァードから参りました、イリーナ・グランディスと申します。以後お見知りおきをv」






コレである。

全く持って意味不明。
理解不能。

自分をからかってワザとふざけているようにも見えない様子にヴァネッサはいよいよ頭がこんがらがって脳ミソが溶けださんばかりに悩んでいた。

グローリーグラウンドってナニ!?
ソレってドコのクニ!?
ってかドコのホシ!?

それはヴァネッサの周りの人間も同じだった。
草薙京は突然従妹達とともに光の中から現れたその女性の存在に何とも言えない人外の力や雰囲気を感じていた。
ひょっとして日向達は自分達も知らないうちに厄介な事件に巻き込まれたのではないか?
その場にいた大人達。
ヴァネッサ、東一哉、近藤勇蔵、土方歳武、草薙京はじめとするJTスポーツクラブの面々はこの理解しがたい実情に言葉を詰まらせていた。


と、勇蔵がここで重い沈黙を破って口を開いた。


「・・・・つまり・・・アレだな?イリーナさん・・といったか?」

「ハイ」

「アナタはそのグローリーグラウンドという・・この地球とはまた別の異世界・・・のようなところからやってきた人だということか?」

「ハイ、その通りですわ」

こともなげに平然と言い放つイリーナと名乗るこの女性。
近藤とて頭を悩ませる。
彼とて幕末の動乱を生きたかの壬生狼(みぶろ)と呼ばれた剣豪集団の局長、近藤勇(こんどういさみ)の血を今に至るまでにその武とともに連綿と受け継ぎ、戦士として幾多の修羅場を潜り抜けて来た現代の侍である。
闘気を駆使した戦法も体得しており人智を超えた節理や技術にも造詣が深い。

だが、まるで御伽噺そのままの異世界や魔法の存在を信じれるほどには頭が柔軟ではなかった。


「・・・申し訳ないが、今初めて会った貴女の言う事をおいそれと信用することは難しい」

「まあ、そうなんですの?残念です」

「俺も勇さんと同じ意見だ。一哉さん、アンタらは?」

「ああ・・・俺も・・・ちょっといきなりこんな事言われても・・なあ?」

「へ・・へい・・・ちょっとあんまりにも話が飛び過ぎだなぁー・・と」

「無理・・ねえよなあ」

「ひょっとして・・・オレたちが知らないだけで、実際は身近にこういうハナシがあったりする・・・ってのは考えられないっスか?」

「いや、真吾さん、あり得ないですって」


同じ部屋にいる東一哉も、ラモン、火引弾、矢吹真吾、南陽生も同じ意見だった。

「オ〜レはぁ〜vなぁんにも妖しいなんてぇ〜♪思ってないぜぇ〜vvレィディ、お手をどうぞv安心しな♪オレはキミの味方だからさw」

「まあ!あなた様はわたくしを信じてくれるのですか?嬉しい!わたくしイリーナ・グランディスと申します!貴方様のお名前は?」

「俺は二階堂紅丸。この世の美女すべての味方さvレディ・イリーナv」

ただ1人、女たらしの二階堂紅丸だけはイリーナの話す内容をわかっていないのか?それとも美女のためいつものナンパ癖を発動しているのか全く警戒感を見せずに彼女の手を取り、いつもの甘い言葉で彼女を口説き落さんとしていた。
その様子を見かねた一哉と勇蔵がとうとう事態をまとめるように口を開いた。


「ま、まあ、とにかくアレだ。悠奈ちゃん達が取りあえずウソをついていたんじゃないということはわかったことだし・・・その・・・心配したのはもちろんわかるが・・・ヴァネッサ先生・・・」

「・・・ハイ・・・」

「そのぉ・・・まあ、抜き差しならん事情があって・・・夜遊びではなかったようだし・・・謝っといたほうが・・・」

「は・・はぁ・・・」


と、ヴァネッサは先程まで夜遊びと断じ、一切の言い訳を認めず10発プラスα(アルファ)お尻を叩いてしまった子ども達の方を見た。
皆一様に恨みがましい泣きべそ顔でヴァネッサを睨み付けており、14発叩かれた麗奈などは未だにしゃくり上げて泣いている。
その姿にヴァネッサは非常に気まずい思いを感じながらそれでも意を決して言葉を切った。




「え・・っと、その・・・どうやら・・・先生勘違いしちゃったみたいで・・・事情はよく知らないけど、こちらのイリーナさんってお姉さん助けてたんですってね。ゴメンネ!夜遊びって決めつけてお尻叩いちゃって・・・痛かった?」





「ったりめーだろうが!おっせーんだよバカ!」

「謝るくらいならさいしょっからケツ叩くなアホーっ!」

「ちょっとはヒトの話聞けっての!センセーのクセに!ふざけんな!デブ!」

「いっつもいっつもすぐオシリぶつんだから!暴力ババア!サイッテーーっ!この真っ赤にハレちゃったお尻どうしてくれんのよぉ!?」

「いってーに決まってんじゃん!オトメのカワイイシリをめいっぱい叩きやがって!オニ!アクマ!超絶デビルサタン!」

「うええぇぇ〜〜〜んっっ・・ヴァネッサせんせーキライぃ〜〜っっ」





と、ある程度の覚悟はしていたものの正に怒りにまかせた悪口雑言の限りを浴びせられるヴァネッサ。
しかし、そうは言いつつもお尻を叩かれた子ども達6人、一斉にヴァネッサ先生の胸に飛びつき胸を叩いたりしながらも泣きすがる。
そんな彼らをヴァネッサは1人1人優しく抱きしめると「ゴメンねゴメンね」とお尻や髪をナデナデして必死に宥めすかしていた。
と、そこでやれやれと様子を見守っていた近藤がふと口を開く。





「それで、悠奈ちゃん」

「・・・え!?あ・・アタシ!?」

「うむ、キミたちは一体ドコに行っていたのかね?」


突然そんなコトを聞かれて、悠奈は近藤の方を見てしどろもどろ。
「えっと・・それは・・・あの、その・・・」とブツブツ言いながら辺りをキョロキョロ見回した。



「ど・・どうしよう?ヒナタくん・・・」

「そんなコト言われてもなぁ・・・もう正直に言っちゃう?フェアリーのコトとかも・・・」

「だっ・・・ダメよダメダメ!イリーナさまやグローリーグラウンドのコトはともかく・・・アタシたちフェアリーの存在は秘密にしておかなきゃ・・・」

「え〜?なんでなんソレ?」

「ナナちゃん、ちょっとは考えて・・・いきなり目の前にわたしたちみたいな小さい生き物がゾロゾロ宙に浮いてるの見たら・・・ビックリしちゃうでしょ?」

「・・・・あ、そうか」

「それに、オレ達だけじゃなく、魔法の力のコトも内緒にしておかないと・・・悪いコトに利用されると困るからな」

悠奈はよくわかんないケドそうなのかな・・と思った。

よくよく考えてみれば魔法とは不思議な力だ。
手から火や氷が出たりするし、なんか危ない・・・。
コレを悪用すれば確かに犯罪が起こったりするのかも知れない。

しかしこの辺のコトは自分とて詳しいことまでわかるわけじゃないから極力ノータッチで行こう。
悠奈だけでなく、無言で他の子ども達もそう思った、その矢先であった。




「ユウナちゃんたちはグローリーグラウンド、わたしたちの国へ来られてたんですわ」

「ええ!?ちっ・・ちょっと!」
「イリーナさま!?」

悠奈と日向、イリーナの方を振り向いて驚きの声を上げる。
今イリーナさまからグローリーグラウンドに来られてたとかって言わなかった!?
そう言われた近藤先生、再び米神に手を添えながら再びゆっくりと口を開く。


「さっきから何度も聞いているそのグローリーグラウンドというところだが・・・そこは一体どこなのかね?」

「このライドランドとは違う魔法を主体として動いている世界のコトですわ」

「・・・ライドランド?・・と、いうのは?もしかして・・・」

「はい、アナタ方がいらっしゃるこの世界のコトですわ」

近藤は再び口を噤(つぐ)むと周囲いるヴァネッサや京、一哉や歳武などを見渡した。
いずれも困ったように首を傾げたり横に振ったりしている。

ここまで全くぶれる事無く同じ持論を展開しているのだ。

嘘ではない。

それらは全て本当の事か・・あるいはこの目の前の女性が本当に頭のイカレた馬鹿者であるかのどちらかであろう。
近藤は続ける。

「・・・それを信ずるに足る証拠、それをお見せ頂きたいのだが・・・」

「承知いたしましたわ」

あっけらかんと、至って平然と答え、立ち上がるイリーナ。
悠奈、レイアも日向、イーファもそれぞれイリーナに縋って「ね・・ねえねえ!イリーナさま!一体何する気!?」 「魔法のコトバレちゃうよぉ!」   「ヒミツなんでしょ!?ねえったらぁ!」 「オレ達のこともナイショにしなきゃならないんじゃなかったのかよ!?」と口々に叫ぶ。
その様子に事情を知らない大人達はさらに怪訝な顔になり、事情を知る子ども達は皆一様に目をテンにしてイリーナの姿を追う。

ついに、草薙京が「オイ、ネーチャン、アンタいい加減に・・・」とイリーナの肩に手を伸ばしたその時だった。





「この者たちに、信ずる力を。不可視の物を可視にて信じる心を与えたもう・・・フィーリング・フォース!」




突然、イリーナがそう唱えて胸の前で手を組み、クルリと両腕を開いたまま体を回転させた。
するとその瞬間暖かい光が彼女から走り、一瞬、部屋を照らした。


『!!!!』


その眩い輝きに部屋にいた草薙京やヴァネッサをはじめとする大人達は顔を背けた。
一拍置いて後、ラモンを皮切りに次々に口を開く。



「な・・・なんだったんだ?今の・・・」

「あ・・あのねーちゃんから突然光が・・・確かに走って・・・」

「お・・俺もハッキリ見ました」

「このカンジ・・・気じゃねえ。アテナちゃんやケンスウみてえな超能力でも・・・」

「じゃあ・・一体今のは?」

「何か変化でもあったのか?」

「部屋を見ても特に変化は・・・子ども達のほうも変わりなく・・・・・うん?」



と、近藤が部屋を見渡して、ふと、子ども達がいる方へと視線を向けた時。
一同の視線がソコに注がれた時。


時間が静止した。











「きいぃぃやああぁあぁあぁああーーーーーーーーーっっっっっ!!!!」



途端に部屋全体に響き渡ったヴァネッサの絶叫。

子ども達が耳を塞いでビクゥッ!と身を縮こまらせる。
みんなヴァネッサ先生のその声にビックリしたのだが、当のヴァネッサは口をパクパクとさせて顔を引きつらせ、恐怖の面持ちで悠奈たちの方を・・・正確には悠奈たちの頭上を指さししていた。
ガタガタと震え、ペタンと床に尻もちをついている。完全に腰が抜けていた。



「っっ・・・っせえな!何なんだよ一体!」

「どないしてんやセンセー。いきなりそない大声だして」



「お・・お・・・お・・・おば・・おばっ・・け・・オバケ・・・オバケぇぇぇえ〜〜〜・・・」

「?・・お・・オバケ?」


いきなり何を言い出すんだこの人は?
そう思いながらも悠奈は辺りをキョロキョロと見渡した。悠奈だけではなく、日向や七海、窈狼など他の子ども達もである。


「幽霊なんてドコにもおれへんやないの先生」

「チッ、ボケがよ。大方酒の飲みすぎで幻覚でも見たんじゃねえのかよ?それともトシか?立ちくらみか?いよいよ来たかジャクネンセーコーネンキショーガイ」

と、七海に続いて放たれた麗の得意の毒舌にもヴァネッサはブンブンと首を振るとそのまま悠奈の傍らを指さして震えて言った。


「ゆっ・・ユウナちゃんのとなり!!ああっっ!!ヒナちゃんの隣にも!!っっ・・ひいいいぃいいーーーーーっっっ・・・みんなの横にいっぱいオバケエえぇぇ〜〜〜っっ」


「アタシたちの横に・・・オバケ??ねえセンセーったら、どーしちゃったのよ、イミわかんないし・・ちゃんと説明して・・・」

「あ・・あのさあ、ユウナ。もしかして・・・センセーの言っとるオバケってさあ・・・」

「は?」

七海がそう言いながら悠奈の肩をトントンと叩き、振り向いた彼女に向かって指で虚空を指し示した。
七海の指のその先には・・・




「?・・?・・え?え?え!?・・レイア!?」

「ほえ?なんかいった?ユウナちゃん?」




「ぎゃああぁあ〜〜〜〜っっしゃべったああぁーーーっっしゃべっとぉあああぁああーーーっっっ!!」

「おっ・・・落ち着け!落ち着けヴァネッサさんよ!・・な、何なんだ!?その・・・さっきから宙に浮いてる・・なんだ?・・・えぇ〜と・・ざしきわらし・・じゃなくて・・・よくわかんねえケドそのちっちぇえヤツラは!?ひょっとしてヒナたちも見えてんのか?」


京の言葉に、声を上げて仰天するのは子ども達の番であった。




『えええぇええーーーーーーっっっ??』



「まっ・・まさか!・・え?ってコトは!?」

「きっ・・京にーちゃんたち!見えるの?レイアたちが!!?」

「コレでお話しやすくなりましたねv」

「ど・・どういうことかね?説明してくれ!!」



お互いにそれぞれ心理の違いはあれど、一同皆騒然、目を見開いて混乱してる中、場違いな能天気声を発するイリーナに、土方歳武がやや慌てて突っ込んだ。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「オイコラリーダーさんよォ。ホントにセイバーチルドレンズのメンバーはココに来るんだろーな?」

グローリーグラウンド王都、レインヴァードの北西に位置する今は誰も住んでいない大きな城の一室。

ダークチルドレンズのメンバーの1人、チアキはさも傲慢に自身のゲーム機をいじりながら古風な装飾が施された大きな広間。
そこの中央の大きなテーブルについて紅茶を啜っていたブラウンブロンドのロングヘアが美しい少女、サキに声をかけた。
その声に周りにいたダークチルドレンズの他の面々も一斉にリーダーの方へ注目する。

沈黙の中、それぞれがそれぞれ、まるでそのコトを発言するのを憚っているような素振りではあったが、口火をチアキが切ったことでその話題にようやく触れることができる。

ジュナとアカネは互いに今学校でも人気があるモンスター育成ゲームで通信遊びをしており、ミリアはマンガ本を手に、ミウはサキと同じくテーブルについて使用人のコズンが淹れた紅茶とケーキをつまんでいる。
ナギサはアミやユアと一緒にカードゲームをしており、新しくメンバー入りを果たしたナオとリコはテレビゲームをだらだらとしており、それをリッキが見ている。


彼らが全員チアキの言葉によってサキに注目しだした。



「何?アンタ、エミリーさまの言葉が信じられないの?」

「ケッ知るか!エミリーがどれほどのモンか知らねえケドな、オレはイマイチ信用できねえんだよ。大体何なんだこのボロッちい建物はよ?辛気臭えったらねえぜ」

毒づくチアキにフンと顔を背けると紅茶を飲み干してサキは立ち上がり、その場にいるメンバー全員をぐるりと睨み付けてから言った。

「アンタたち何?エミリーさまの言葉を疑うつもりなの?どうなの!?」


「べ・・・別に・・・」

「そんなコト・・言ってないケド・・・」

ジュナとナギサが歯切れ悪そうに呟くと追い打ちをかけるかのごとくサキが言葉を続ける。

「エミリーさまを疑うならアタシは止めない、帰りたければ帰ればいい、それぞれの居場所へ。でも、アンタたちに居場所なんてあるの?みんな自分の家や親がガマンならなくって、腐ったアンタたちの世界を変えてやるってエミリーさまのところに来たんじゃないの?それを今さら疑う気?」

サキの言葉にその場にいるダークチルドレンズの子ども達は誰一人として反論できなかった。
依然、射るような眼差しでメンバーを睨み付けるサキ。
場を支配する重い沈黙。しかし、そこで新メンバーの1人、ナオが突然テレビゲームのコントローラーをやや乱暴に放り捨てて立ち上がると、サキの方を見て言った。


「あたしは・・・サキの意見に従う」

「ナオ・・・」

「あたしたちは、エミリーさまにスカウトされた時にみんな誓ったって聞いた。このグローリーグラウンドを制圧して、無限の禁断魔力を手に入れて、あたしたちの腐った世界と大人どもに目にモノ見せてやるって。その目的のためにはどんなことだってするって・・・少なくとも、あたしはそうする!やる気のないヤツはココで消えればいい」

「・・・フン、新入りのクセに中々生意気なコト言ってくれるじゃないの」

それに反応したのは、桃色の髪の少女、ジュナだ。
彼女も持っていたゲーム機の電源を切り、ナオの前にズイと進み出ると声高に宣言した。

「アタシだってもちろんエミリーさまを信じてる、アンタに言われる筋合いなんてないわ。ココにいる全員、都合のイイことばかり押し付ける親にウンザリしてんのよ。だからいつかソイツらを見返してアタシらの力を思い知らせてやるためにココにいる!そうでしょみんな!」

その言葉を聞くと、全員が立ち上がってそれぞれ決意に満ちた表情でうなづいた。
正面きってサキに反論していたチアキですらも、言われてみれば・・・と思ったようで不精不精ではあったが、頷いていた。
その時だった。


 ファーン・・・   ファーン・・・ 


『!!!!』


部屋のそのテーブルの中央に設置してある水晶玉が突然赤紫色に妖しく発光し、独特のサイレン音を鳴り響かせたのだった。
一同の意識が一斉にそちらに注がれる。



「ウィザーズ・コレスポンドが・・!?」

「エミリーさま!」


ジュナとサキがそう叫んだ直後、水晶から光が洩れ、広間の中央にエミリーの姿が映し出された。



「ごきげんよう。わたしの可愛い子ども達」

「エミリーさま!」

映像となったエミリーは微笑みかけながら部屋にいたダークチルドレンズの面々に語り掛ける。
サキは何事か自分自身に言い聞かせるとエミリーに話しかけた。

「エミリーさま!その・・・ココ、グローリーグラウンドにセイバーチルドレンズは・・・やってくるんでしょうか?」

「あら、心配なのね?可哀想に」

「い・・いえ、べつに・・エミリーさまを疑ってるわけじゃなくって・・そのっ・・」

「わかってるわ。いつもゴメンナサイねサキ。アナタにばかり苦労をかけてしまって・・・」

「そ・・そんな!いいんですっアタシは・・べつに・・・」

必死に疑念を抱いていないということを訴えるサキに、エミリーは実態はなかったが、その手で優しく彼女の髪を撫でた。

「大丈夫よ。きっと今にもセイバーチルドレンズの子達はココへ来る。いい?ココがグローリーグラウンドでのあなた達のアジトとなるわ。ライドランドからの物資もこれから次々に運び込まれるし、貴方たちのお世話をしてくれる使用人も用意するわ。ライドランドとグローリーグラウンド。2つの世界を行き来して、任務にあたって頂戴」

エミリーのその言葉に確信を深めたサキは、顔を輝かせると「ハイ!」と元気よく返事をしてあらためて他のメンバーに叱咤激励を飛ばした。
その様子にエミリーは満足げに微笑む。

「ナオ、リコ、リッキ。アナタたちもみんなと力を合わせてしっかりね」

「・・ハイ」
「ウザイんだケドなぁ〜・・・ま、りょーかい」
「ウス」


そう言い残して、エミリーは消えてしまった。
辺りを再び沈黙が包む。

「・・・エミリーさま、ちゃんと来るって言ってたわね」
「アタシたちはそれを信頼するだけよ・・・コズン!」


「ハ。」

「エミリーさまがくれた新しいあのアイテム、用意してちょうだい。これから作戦を立てるわ」

「かしこまりました」

ニヤリと笑ったサキの顔には、新たな決意が満ち溢れていた。







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「・・・グローリーグラウンド・・」
「異世界だあ・・??」
「魔法がある世界・・・」
「ゲームやマンガじゃねえんだよ・・な?」
「ゲンジツ・・・なんスか?ホントに?」
「ホントにあるのか?そんな世界が!?」
「とても信じられん」
「えっ・・・と、夢・・・じゃ、ないんですよ・・ね?」
「ああ、極めて信じ難い・・・が」
「・・・その、俺達にも・・・」


「ほよ?」


「・・・・見えてるから・・・な」




所変わって東一哉と麗、光が宿泊予定のホテルスイートルーム。
広々とした豪奢な客室内のダイニングで、セイバーチルドレンズとイリーナ、フェアリーたち、そしてJTスポーツクラブの面々をはじめとする保護者の大人連中が神妙な面持ちで話をしていた。


あの騒動の後、オバケオバケとぎゃあぎゃあ騒ぎ立てるヴァネッサを何とか落ち着かせ、イリーナが彼らに事情を約30分程かけて説明。

グローリーグラウンドの存在。
王都レインヴァードの存在。
どのとうな世界、国家であるのか?こちらの世界と如何にして行き来しているのか?
メイガス・エミリーがグローリーグラウンドで何をしたのか?その結果何が起こったのか?
セイバーチルドレンズとは何なのか?ダークチルドレンズとは一体?

普段、悠奈も少々慣れてきた少々ホワホワして天然っぽいな、と思わせるような素振りは微塵もなく、流石若くとも一国の女王様だと納得できるような実に解りやすい理路整然とした説明だった。
今一つ自分たちの立場や目的があいまいなメンバーもいたようで、その子たちにも目的を再確認させるいい機会となった。

そして、一通りの説明が終わって、今に至る。
保護者の大人達は皆一様に狐につままれた表情をしていた。
それはそうだろう。こんな如何にもファンタジー要素沢山の非現実的な話を受け入れろという方が土台無理な話である。
いかにイリーナの説明が筋の通った明快なものであったとは言え、それですんなり信じることなどとてもできなかっただろう。



目の前でフワフワと浮遊しているこの小さな小人たちさえ見えなければ・・・




ヴァネッサ、一哉、勇蔵、歳武といった年長者グループがそれぞれ必死で頭の中を整理する。
そして、しばらく考え込んでから一番の知恵者であり年長である近藤勇蔵が話を切り出した。



「つまりその・・・イリーナさん、貴女が生まれ育ったそのグローリーグラウンドという魔法を主体にしたこの地球とは別の世界。そこは今、エミリーという私利私欲に目が眩んだ悪い魔女によって王位簒奪の危機に直面しており、そのエミリーの攻撃から国を守るために先代の女王、貴女のお母様が眠りについてしまった・・と」

「ハイ、その通りです」

「そのエミリーは、グローリーグラウンドは勿論の事、この我々が生きる世界・・・そちらの呼称でライドランド・・だったか?それをも無限の禁断魔力、王家の封印呪文を手に入れることによってこちら側も支配しようと企んでいる・・と?」

「ええ、その通りですわ!」

「フムフム・・・1度は体に一生消えない呪印を刻みつつもその圧倒的な魔力を手に入れ、王位簒奪に成功しかけた。正し、貴女のお母上が激闘の末、その魔力の源を12個のエートピース・・・だったか?というコアに封じ込め、この世界に散りばめた。復活するにはそのエートピースすべてを手に入れる必要がある」

「ハイ!ハイ!そうです!」

「しかして、その役割を担っておるのが、エミリーによって選ばれた10人を超える魔法を扱うことのできる子ども達、ダークチルドレンズ。その中にはこちら側の世界の子ども達も入っておる、と。彼らの目的はこちらの世界にて召喚させたジュエルモンスターと呼ばれる怪獣のようなものを暴れさせ、人々からその禁断魔力の元となるマイナスエネルギーという一種の精神心情のようなモノを抜き取り、エミリーの封印されている魔力を開放するための道しるべや動力原になっている・・と」

「そうです!そうなのです!」

「そればかりか、先日そのダークチルドレンズはグローリーグラウンドの魔力を枯渇させてしまう恐れのあるフォースクリスタル・・・でよかったな?トシ?」

「ああ、俺もそう聞いた。間違いはない」

「そうか。そのフォースクリスタルをグローリーグラウンドのある6カ所にばら撒いてしまった。それを開放するためにもフォースクリスタル・デュエルという闘いにも勝たなくてはならん」

「ハイ、間違いございません!」

「そして、それが出来て、エミリーの野望を打ち砕けるのは、古くから伝説にあるセイバーチルドレンズだけで、そのメンバーが、フェアリー、妖精くんたちによって選ばれた・・・悠奈ちゃんたちだ・・と。大体こんな感じの話でよいかな?」

「素晴らしいですわ!もうそこまで理解していただけるなんて!なんて賢いお方なんでしょう!近藤様!そこまでお分かり頂いてありがとうございます!」




「オイ、陽生・・・オレ、何の話かホンット―にさっぱりチンプンカンプンだったってえのによ・・・近藤先生・・・スゲーぞオイ・・・」

「え・・ええ。見事に話、要点ついちゃってますね・・・」

「ただの剣道オヤジじゃなかったのか。オレもそんなに細かい事までわかんなかったぜ」

「そういや、聞くところによるとあの人、試衛内の大学教授の免許ももってるって話だぜ。あんな厳つい顔してよオ・・・人は見かけによらねえモンだな」

「ええ、そう言えば草薙さんに聞いた話だと、相当頭もイイらしいっスよ」


たった今聞いたばかりの、しかもかなり非現実的でぶっ飛び内容のワケわからん話を、ここまで要約した近藤勇蔵という男の理解力に、京、陽生、ラモン、ダンそして真吾は舌を巻いていた。
現実味の無い何とも納得しがたい事実。フェアリーを実際に見ても納得できない部分がある。
普通の人間ならそれが正常な反応だろう。しかし、ヴァネッサにしてみればそれよりももっと承服しかねる事実があった。





「ですから、彼等、セイバーチルドレンズのみなさんにはなんとしてもエミリーの野望を打ち砕いて、グローリーグラウンドを取り戻して欲しく・・そのために・・・」




「どうして、この子たちなんですか?」

ヴァネッサがふと呟いた。
ヴァネッサの言葉にみんなが振り返る。
ヴァネッサの表情が今までにないくらい暗くなっていたことにいち早く気づいたのは、意外というべきか?それとも当然というべきなのか?

東麗だった。


「・・・ヴァネッサ・・センセー・・」


沈痛そうな面持ちで唇を噛んでいる。
こんな辛そうな顔は、ヴァネッサと付き合って丸1年半たとうかという麗も、光も、見たことがなかった。先生でもこんな顔をするのか?
自分達を叱るために厳しい怒った顔を見せるコトは何度もあったが、それでも麗も光も、辛そうに顔をしかめている弱弱しい表情など初めて見たのだ。
そのヴァネッサがさらに続ける。

「アナタの仰ることはわかりました。そのコトが嘘でないこともわかります。国家を乗っ取られる危機、心中察するに余りあります。でも、そのセイバーチルドレンズとかいう役割がこの子達である理由がわかりません。なにもこの子達じゃなくてもいいはずです」

「ヴァネッサ先生・・・」

「それは・・・でも、ユウナちゃんやレイくんたちが、セイバーチルドレンズとして相応しい高い魔力を持っていたから・・・これは彼らにしかできない立派な使命なのです」

「使命?使命ってなんですか?彼らは子どもですよ!?一方的に使命なんて押し付けないでください!そんな危険なこと・・・ケガをしたり・・命の保証だってわからないでしょう!?」

悠奈は突然のヴァネッサの厳しい声にビックリした。
麗や光たちを叱った時の声とは全く質の違う、緊迫感に満ちた荒々しい声。
驚いたのは悠奈だけではない。
日向も、七海も、窈狼も、晃、咲良、麗、光、那深、麗奈。
子ども達みんながヴァネッサ先生の様子に言葉を失った。
かつてここまで自分達の前で声を荒げることなどなかった。こんな先生は初めて見る。

ヴァネッサの気持ちを察したのであろうか?イリーナが言葉に詰まり、困ったような表情を見せた。そんな状況に、悠奈は少し考え込んでから、意を決したように軽く頷いた。
まるで何かを自分に言い聞かせるように。
悠奈を見てとったレイアが、怪訝そうに「ユウナちゃん?」と声をかけようとした時、すでに悠奈は言葉を発していた。




「ヴァネッサ先生・・・」

「?ユウナ・・ちゃん?」

「先生の気持ちさ・・嬉しいんだケド・・・アタシ、もう決めたんだ」

「・・え?」

「イリーナさまと・・・レイアを助けるって」

悠奈の意外な言葉に場の大人達だけでなく、他のセイバーチルドレンズのメンバーも、目を見開いて悠奈を注視した。
さらに悠奈は短く息をつくと続けた。


「アタシね。最初はレイアにいきなりセイバーチルドレンになってグローリーグラウンドのために戦ってくれって言われた時さ・・・正直何が何だかわからなかったの。あり得ないと思った。だってそうでしょ?ある日突然へんな妖精が見えるようになって、魔法が使えるようになっちゃって・・・いきなりコワイモンスターと戦えなんて言われて・・・自分にとって全然得なコトなんか何もないのに、挙句アタシだけじゃなくってヒナタくんとかレイまで巻き込んでさ・・・。なんてメイワクなんだろうって思った」

「・・・・」

「でもね。わかっちゃったの。わかりたくもなかったケドさ、思っちゃったんだ。自分が同じ立場だったらどうしてただろうって・・・パパやママや大切な人たちがたくさんいる自分たちの世界がさ、ある日突然悪い奴に奪われてみんなが苦しめられちゃったら・・・どうしたんだろう?自分もレイアたちみたいに誰かに助けてって言ったかもしれない・・・その時、自分はカンケー無いからイヤだって言われたら・・・どんなに悲しいだろう・・って・・・」

「ユウナ・・ちゃん」

「うちのママさ。言ってたんだ。もし困ってる人がいたら、助けてあげなさいって・・・そうしたら、自分も嬉しいよ・・って。イリーナさまもさ、自分のお母さんがエミリーってヤツのせいで病気にかかってツライんだ。レイアやイーファたちだって・・ただ自分たちの国を、大切な人たちを守りたいって・・・ソレって、普通のコトじゃん。先生だって、アタシとか、レイとかが困ってたら助けてくれるでしょ?」

「そ・・・それは・・・だって、わたしはアナタたちの保護者としての責任が・・っ」

「おんなじだよ?誰かを助けたいって気持ちは、ホゴシャとかそんなのカンケーなく同じ。アタシ決めたの。そりゃ確かにコワイけど、アタシの力で少しでも誰かが幸せになれるなら・・・やってみてもいいかな?って・・・」



「ユウナちゃぁ〜〜〜〜んっっっ」

「わっ・・なっ・・なによ!レイア!ちょっとっ・・顔に引っ付かないでよっっ」

「ありがとう!知らなかった!ユウナちゃんがそんな風に思ってくれてたなんて・・・レイアたちのコト、そこまで考えてくれてたなんてっっ」

「ちょっ・・べつに考えてたワケじゃ・・・ただ・・仕方なく・・・」

「えらいぞ!ユウナ!よく言った!」

「ひっ・・・ヒナタくん!?」

「オレのおとーさんもお前のママと同じことオレに言ってた!そうだよ!困ってる人がいたら助けてあげなきゃ!だって・・・レイアもイーファも!ウェンディもユエもヴォルツもバンもリフィネもクレアもルーナもケンも!みんなオレ達の仲間なんだから!なあみんな!」

悠奈の言葉に嬉々として彼女の元に駆け寄った日向。
その彼の力強い言葉に、周りの子ども達もそうだそうだ!と同調する。
途端にフェアリーと子ども達が互い互いに抱き合い、キャーキャーと手と手を取り合ってはしゃいだ。
その姿に呆然とするヴァネッサ。
そんな彼女に麗と光が言った。


「・・・だとよ先生。ま、メンドクセーのは事実なんだけどよ」

「おう!成り行きっちゅうか・・・オレらももう腹ぁ決めてんねん!せやからセンセーには悪いけど、カンニンなv」

「レイちゃん・・・ヒカルちゃん・・・」




「ヴァネッサ先生、どうやらお前さんの負けのようだな」

「残念ながら・・・な」

「こっ・・近藤先生!?一哉さん!?」

ヴァネッサはそんな後ろからの声に思わず振り返る。すると苦笑しながら勇蔵と一哉、陽生、そして京が自分の方に近づいてきた。

「先生が子ども達の身を一番に案じてくれていること・・・麗の父親としても嬉しい限りです。ありがとうございます。でも、コイツぁムリや」

「え?」

「ヒナのヤツぁああ見えて中々にガンコでな。1度決めちまったらテコでも動かねえぜ。俺も腹ぁ括ったよ」

「ですね。アキラとサラのヤツもなんかやる気みたいだし・・・オレも気合入れねえとならねえかな?」

「うむ。どうやら・・・子どもの成長というのは大人が考えている以上に早いようだ。あれほど決意に満ちた目をまだ年端もいかぬあんな子ども達がしおるとは・・・どうかな?ココは、アンタも覚悟を決めたらどうかね?我々もこの事実を知った以上は、出来る範囲で最大限にサポートすると約束しよう。どうかね?子ども達の好きにさせてやっては?」

そう口々に言われてヴァネッサは子ども達を見つめた。
確かに、いい顔をしている。
自分でやりたいこと、目的を見つけた子ども特有の生き生きとした表情だ。

この子達は自分たちで、人のために何かをしようと本気で思っている。いや、願っている。
確かに心配事は尽きない。
でも、彼らが精一杯自分たちで考え、決意したことならば、一教育者としてどうするのが最善か?
ヴァネッサは一拍考えて、そして、イリーナの方に向き直るとこう言った。




「イリーナさん。グローリーグラウンドやその魔法の力のコト・・・・もっと詳しく教えてください」

「え?」

「アナタがわたしを見て決めた。とおっしゃったその事、お受け致します。セイバーチルドレンズの・・保護者として、わたしも責任を持って協力します」

「!!・・・ヴァネッサ様!」

「ただし条件があります!これから先、このコ達がどんな任務につくのか?それを詳細に知らせてください。そして、わたしが彼らに荷が重いと判断すれば・・・その時は保護者として彼らの任務を辞退させていただきます。それでもよろしいですか?」

「・・・わかりました。ユウナちゃんたちのコトは我らレインヴァードの国家を上げて全力でサポートさせていただきます!」

「・・・このコトは、悠奈ちゃんたちのご両親には黙っておきますね。この場に居合わせた者たちの秘密と言う事で」

「ハイ。もちろんです」

「聞いたか?京くん、一哉くん、トシ。このコトは一般の人間には他言無用だ」

「おう」

「はい」

「承知した」


「イリーナさん!オレらも知ったからには協力させてもらうぜ!」
「ああ!サイキョー流の力が必要な時は遠慮なく言いな!」


ラモンやダンも力強くそう言って笑いかける。
ヴァネッサはイリーナの手を握ると笑顔で

「じゃあ、契約成立!これからヨロシクお願いしますねv」

と言った。
うなづくイリーナの瞳は、微かに濡れていた。


「うぅ〜〜んvvオレも協力しちゃうぜぇ〜ベイベェ〜wイ・リー・ナ・ちゃあぁ〜〜んv」

「まあ!嬉しい!紅丸さま。紅丸さまもグローリーグラウンドを救うために力を貸してくださるのですねv」

「俺は、この世のすべての美しい女性のためのナイトさ!キミがお望みならなんだってやるぜぇ〜ハニー!・・・で、ぐろーりー・・なんとかって・・ナニ?vv」


「・・・アレには期待するな陽生」
「そう、今の紅丸さんアテにしようなんてそんな無謀なコトねえぞ」
「え、ええ、わかってます・・・さっきからイリーナさんだけに夢中で話ロクすっぽ聞いてねえっスからね」


と、そんなイリーナ自身にメロメロでただ1人話を聞いていない二階堂紅丸を見て、京と真吾、陽生がそんなコトを言っていた。





「今日はもう遅い。キミたちのお宅には私から連絡しておくから、今日はこのホテルに泊まりなさい。今日のところは解散にして、また明日もう少し話を聞くことにしよう」

「えぇ〜〜なんでぇ〜こんどーせんせえぇ〜、明日ガッコー休みだしいーじゃんvなーレナ!」
「うん!レナまだ全然眠くなぁ〜い。まだ10時半だよぉ」

「もう10時半だ。子どもはもう寝る時間!大きな使命を負っているのだろう?健康に支障が出てはそれも果たせんぞ?睡眠こそは健康な体の秘訣だ。さあ、もう寝なさい」


近藤の言葉にレナやサラをはじめとするメンバー達はブーブー文句を言っていたが、やはり今日グローリーグラウンドに行ってきた疲れも出ており、さらに半分誤解ではあったが、ヴァネッサ先生にお尻を叩かれて号泣したことの泣き疲れも手伝って、それぞれ用意された部屋で横になると、すぐに寝息を立ててしまった。




その夜、日向と窈狼も同室で同じホテルに泊まった。
悠奈も、七海と一緒の部屋で休むことに。

「なあ、ユウナ起きとる?」
「・・・うん」

「なんか、京にーちゃんまで巻き込んでエライことになってもうたな」
「そうだね・・なんか信じらんない・・・時々思うよ。コレ、全部夢なんじゃないかって」

「・・・せやな。でも、ウチらのママには内緒やさかい。やっぱりコレって現実なんよなぁ・・・クスっ」
「?ちょっとナニ笑ってんの?」

「アホ、アンタのせいやんか。困ってる人を助けたい・・なんて、アンタそんなキャラちゃうかってやろ?いつからそんなんなってん?似合わんわぁ〜クール&スパイシーなユウナちゃんが」
「・・・うるさいなぁ、自分でもわかんないわよ」

「・・・明日から・・・どないなんねやろな?」
「・・・わかんないって」

「ダイジョーブだよ!ユウナちゃん!」
「そうそう、ナナちゃんとユウナちゃんは、わたしたちフェアリーがしっかり支えるからね」

「レイア・・・」
「ウェンディ・・」

2人の頭の上に、レイアとウェンディが飛んできてそんなコトを言う。
小さな2人に支えると言われたのがなんとも可笑しくて思わず笑ってしまった。

「あ!でも!ドサクサにまぎれてヒナと馴れ馴れしくすんのはナシやからな!聞いとんのか!?」
「・・・オヤスミ」



そう言って絡んでくる七海に一言告げると、悠奈も目を閉じた。

彼女も疲れていたのか、眠りに落ちるのに、さほど時間はかからなかった。





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「それでは、早速グローリーグラウンドへと向かってもらおうと思います」

「・・・・ほぉ・・・・・・・・ってイキナリだなオイ!」

ホテルのレストランでの朝食の席、イリーナの発言に草薙京が声を上げた。
悠奈やイリーナ達がついているテーブルは一般客用とは隔絶されたスペースにあるVIP専用の来賓席で、通常のテーブルの4倍ほどの広さがある。
大きなテーブルの上には様々なパンやスクランブルエッグ、ベーコン、サラダにフルーツの盛り合わせ、新鮮なミルク、オレンジジュース、ヨーグルトなどの定番をはじめとして豪華なメニューがズラリと並んでいる。
おいしい朝ごはんに舌鼓をうっていた子ども達も、イリーナの言葉を聞いて京と同じように驚いた様子でイリーナの方を凝視した。当然大人連中も一緒である。

フェアリーたちまでもが「またいきなり何を言い出すんだこの人は?と言ったような顔つきである」

「これはまた随分と急な話だな。ちゃんと訳を聞かせて頂いてもよいかな?」

落ち着き払った様子で手にしていた椀をテーブルに置いて問いかけた勇蔵。
彼はパンではなく白粥と梅干、沢庵といった質素な食事である。
湯呑みで茶を啜る勇蔵にイリーナはコクリと頷いて言った。


「悠奈ちゃんたちセイバーチルドレンズのメンバーには、アドベンチャラーギルドに登録してもらい、ジョブを決めてもらいます」

「あどべんちゃ・・・じょぶ?・・な・・ナニソレ?」

「簡単に言えば、みんなの特技に合ったジョブ、つまりは職業、役割を決めてもらうのよ」

「職業・・役割・・・?・・・ウチら子どもやのに仕事せなアカンの?」

「そうじゃないのよナナミちゃん。これまで何度かジュエルモンスターや召喚モンスターと戦ってきたと思うけど、みんなそれぞれ得意な魔法や戦い方が違ったでしょ?」

「確かに・・・言われてみれば・・・」

悠奈はイリーナにそう言われてこれまでの戦いを振り返ってみた。
確かに皆それぞれ個人個人で使える魔法や得意とする戦闘スタイルが違っている。
自分や、那深は離れた所から飛び道具や攻撃魔法で味方を助けている気がするし、かたや日向、窈狼、麗、光、晃などは前線で近接攻撃を用いて正面から魔物と闘っていた。
七海や沙良、麗奈などは独特の治癒や身体能力向上、能力変化など魔法を用いて味方を支援している。

それは他のメンバーも思ったみたいで、皆食事の手を止めてそれぞれお互いの顔を見ている。それを見てイリーナはさらに続けた。

「アドベンチャラーギルドは冒険者支援施設。グローリーグラウンドで様々な冒険をしている冒険者たちをサポートしている施設です。昨夜わたしも申した通り、ユウナちゃんたちを全力でサポートするためにはまずアナタ達にグローリーグラウンドで公認されている冒険者として登録していただく事が第一ではないかと考えました」

「ち、ちょっと待ってください。その・・・冒険者・・ですか?それとして登録すると、なんでサポートすることになるんですか?」

「登録して、自分のジョブがハッキリすれば、多くのスキルを身につけるコトができます。そうすれば、ダークチルドレンズとの戦いにおいても必ず役に立つはずです。ダークチルドレンズの子ども達は、すでに自分のジョブを把握しているとの報告も受けていますので」

「・・・よくわからねえケド、つまりは自分の戦闘スタイルを理解してより応用力を高めて発展させて実力を向上させる・・そう言うコトか?」

「なるほどな!空手やってるなら空手家としての鍛錬を、ボクサーならボクシングの練習して実力を底上げすることと同じか!」

「ええ、そのようなものです」


なんとなくイリーナの言わんとしているコトがわかった陽生とダンにイリーナ自身も肯定的な返事を述べる。すると今度は勇蔵からイリーナにその冒険者支援施設というモノに対して質問が来た。

「その、冒険者支援施設・・とはどんな物なんだ?そもそも冒険者という輩自体が漠然としていてイマイチ理解できかねるのだが・・・遺跡や古代建造物等を探検する者たちか?」

「ハイ、グローリーグラウンドには多くの冒険者、アドベンチャラーたちがいます。グローリーグラウンド内には未だ発見されていない未知の遺跡や文明が数多く点在してます。文化発展のためにも、我がレインヴァードでもそのような古代文明を次々解明したいのですが、そのような遺跡には多くの場合、危険なトラップや人を襲う凶暴なモンスターが生息していることが少なくありません。そこで我がグランディス王家の2代目当主、ユウイチ・グランディスは冒険者支援施設、アドベンチャラーギルドを設立し、探検家のエキスパートを育成しそのような危険な遺跡の探検や調査を自由に行ってもらえるようにし、もし歴史的発見があればそれを報告してもらい、そして代わりに報酬を支払うというシステムを作り出したのです。ちょうど私のひいひいお爺さまになりますわ」

「ほォ・・そうなのか。割と統制機構とれてんだな」

「うむ。少し興味がわいてきたな、その国に」

「そんなコトはどうでもいいんです!」

イリーナの話に幾分感心したように呟いた一哉と土方歳武にヴァネッサは腹立たしそうに机をバン!と叩いて立ち上がった。
その様子に子ども達もビックリする。なんか昨日からヴァネッサ先生がコワイ・・・
悠奈や日向、七海や窈狼など、割かしまだヴァネッサ先生と付き合いの薄い子ども達はことさらそう思った。しかしそんな子ども達の気持ちなど察することもなく、ヴァネッサはイラついたように一哉と歳武に言葉を吐きながら再度イリーナに問い尋ねた。


「一哉さんも!土方社長も!もうちょっと緊張感持って下さい!子ども達のコトを離してるんですよ?イリーナさん。その・・えっと、アドベン・・えーと・・」

「アドベンチャラーギルドです」

「そうそれ!その施設の治安はどうなんですか?ガラの悪い連中は?子ども達に悪影響はないの?そのギルドに登録すればキケンは少なくなるんですか?保険は?ケガしたときとかの保証は?」

早口でまくし立てるヴァネッサ、それを見てイリーナはクスリと思わず笑った。

「なっ・・なにかおかしいこと言ってます!?わたし!?」

「いいえ、ゴメンなさい。ヴァネッサ先生、本当に悠奈ちゃん達のコトよく考えてらっしゃるんですね」

「そ・・それは・・当たり前でしょう?この子達の親御さんからわたしは責任を持ってお預かりしてるんですから!」

何を当たり前のことを・・と口では言いつつも、ヴァネッサも正面向かってそう言われると照れ臭かったらしく、顔を赤らめてコーヒーを啜った。
イリーナは短く深呼吸すると、意を決したようにヴァネッサ達に言った。



「わかりました。是非、ヴァネッサ先生達もいらしてください。グローリーグラウンドに。あなた方にも是非見ていただきたく思います。グローリーグラウンドという世界がどのようなところかを」

「へ!?・・い・・イヤ、別に行きたいとかそう言うコトじゃなくって・・・ただキケンはどうなのか、保証はどうなのか?・・とかを聞きたいだけで・・・」

「いーじゃねーか、ヴァネッサさんよ。よく言うじゃねえかよ百聞は一見にしかずってよ。見て見りゃどんなものかわかるさ。てなワケで俺も行くぜ」

「え?京にーちゃんも?」

「おう!京にーちゃんだってヒナの保護者だからな」


「そうだな。ここまでかかわった以上、中途半端なコトは出来んだろう」

「ええ、俺達もその世界がどんなものなのか把握しておく必要がありますからね」

「うむ、会社の方へは連絡しておかなければならんな。急な用事が入った・・・と」

「ロードワークがあったんだが・・・ま、サイアクそのグローリーグラウンドってトコでできたらするか」

「オレも今日は何も予定無いしな、まあ付き合ってみるか」

「ヴァネッサ姐さんが行くなら俺も行くかなぁ?面白そうだしよ」

「異世界かぁ・・・サイキョー流の支部なんてつくったら流行るかなぁ?」

「イリーナちゃん行くのぉ!?イエイ!もちろん俺様も行くぜえw」



と、なんと京の言葉に反応してその場にいた大人連中が全員グローリーグラウンドに行くと言い出した。
これには悠奈たちもビックリだ。
本来グローリーグラウンドのコトは内密にしなければならなかったのではないか?


「ちっ・・ちょっとレイア!いいのコレって?京さんたちみんなついてきちゃうみたいよ?」

「えぇ〜!?・・あ・・あたしにもよくわかんないケド・・でも、イリーナさまが言うなら・・ねえ・・」

「大丈夫なのかなぁ?イーファ、どうなの?」

「イリーナさまが決めたんだったらオレ達は何も言うつもりはねえよ。なにか考えがあるんだろう」



「如何です?ヴァネッサ先生、先生も是非いらしていただけませんか?グローリーグラウンドに。わたしたちのためではなく、子ども達のために・・・」


そんなイリーナの言葉と、ヴァネッサを見つめる悠奈や京を含む多くの視線にヴァネッサはついに「ハア・・・」とタメ息をつくと、子ども達の方を一瞥してからイリーナに向き直った。

「わかりました。このコ達がどうしてもやると積極的になってるのでしたら、その気持ちを応援してあげるのがわたしの務めですから・・・一哉さん、悠奈ちゃんやヒナちゃん。それとナナちゃんとヤオくんの親御さんたちには・・・」

「それは俺にまかせろ。どうやらこのコトは我々以外には他言無用のようだからな。彼らのご両親にはこちらから適当な理由をつけて不審に思われないよう働きかけておくさ」

「・・・こちらの時間で今日の夕方の5時!それ以上は認められませんけどよろしいですか?」

「ええ、十分ですわ。それでは・・・」



イリーナはそう言うと、レイアに渡したこちらの世界とグローリーグラウンドを繋ぐゲートキーパータクトによく似た道具を取り出し、呪文を唱え始めた。


「我が魔力の命に従い、光の道よ、虹の架け橋よ。我とこの者たちを彼の地へいざなえ・・・!」



「うおっ!?」
「なっ・・なんだ!?」
「まぶしっ・・光!?」
「何の!?・・一体・・?・・っておお!?」
「なっ・・なんか出て来た!?草薙さん!なんか出てきましたよ虹色の・・なんか!」
「コレは・・・?トンネル?」
「虹色に光ってますよ・・・なんだコレ?」
「ひょっとして・・・」


「・・・コレ・・が?」

「そうです。コレがウィザーズ・ゲート。このライドランドとグローリーグラウンドを結ぶ道なのです。さあ・・・」

「いや・・・さあって言われても・・ねえ・・京くん」
「あ・・ああ、いきなり入れって・・・ダイジョブなのかコレ?」


「あ、京にーちゃんコワイんだ?」
「なっ?・・ヒナ、イヤ、コワイとかそんなんじゃなくて・・なあ・・」
「じゃあ、オレたち先に行くよ?ユウナ、いこっ!」
「えっ?あ、ああ、うん」
「え!?いこっ!・・ってヒナ!オイ!ちょっと待て!まちなさっ・・・あ・・・」

と、京とヴァネッサを尻目に日向はイリーナの開けた虹の扉にユウナを連れてさっさと飛び込んでしまった。
呆然とそれを見送る、ヴァネッサ、京。そして残りの大人達。


「・・・行・・・っちまった・・・どうする?」
「どうするって・・・そりゃあ・・・」


「ちょっとぉ!ビビッてんやったらウチら先に行くで京にーちゃん!」
「あっ!まてよナナミ!」

「ったく、情けねえツラしてんじゃねーよセンセー、コワイんならとっとと帰れよウッゼーな」
「オレら先行って待っとるで。心の準備できてからでえーから来ぃーやー」

「ちょっとォ!レイちゃんもヒカルちゃんもおいてかないでよぉ、ホラ!レナ行くよ」
「ハイハイハーイ!レイちゃんまぁってぇ〜v」

「アニキも来るなら来いよ。じゃな!」
「なぁにビビってんだよアニキってば!カッコ悪ぅ〜wおっさきぃー♪」

「おっ・・オイアキラ!サラぁーっ!」



あれよあれよという間に子ども達が次から次へと現れた虹色のゲートに次々と飛び込んでは消えて行った。
後に残された大人達、無言でそのゲートを見つめている。

『・・・・・・』

「どうしました?みなさん。大丈夫ですよ。このゲートは至って安全ですから」

「う・・う〜ん・・」
「まあ、子ども達が飛び込んでいったから大丈夫は大丈夫なんでしょうケド・・・」

どうも躊躇が見られる大人連中だったが、ココで南陽生が意志を固めたように前に進み出た。

「よォし!オレから行きます!」

「陽生?」
「陽くん!?」

「大丈夫っスよ。アイツらだって飛び込んだんだからココでビビったらアニキのメンツ立ちませんからね。よっし、じゃあ・・いち、にぃの・・さん!」

そう気合を入れて自分に声がけしながら、陽生もそのゲートに飛び込んだ。
それに呼応するように他の大人達も続いた。

「よぉっしゃ!次は俺が行くか!ビバ・メヒコっとぉ!」
「最強・爆走!うぅ〜楽勝ォ!」
「ちっ・・ちょっと待ってくださいってラモンさん!ダンさんもぉ〜っ!」

「そのまま・・入ればいいんですかね?じゃあ・・近藤先生、お先に・・よっと」
「う〜む・・まあ、何かあればどうにかしてみるか」
「・・・今日は午後の会議にも出られんな」

「オっレはイリーナちゃんの言葉ならぜぇ〜んぶ信じちゃうぜぇ〜♪とぉーう!」



そうそれぞれ思い思いの言葉を口にしながら子ども達と同じようにゲートの中に飛び込み、そして消えて行った。

後に残されたのは京とヴァネッサのみ。



「どうやら・・行くしかねえみてえだな?なあ先生よ」
「そうね。じゃ、行きましょうか」

「大丈夫だよ」

「「?」」

そう言ってヴァネッサと京の方に近づいてきたのはレイアをはじめとするフェアリーたちだった。

「最初は誰だって不安になるのは無理もないし、ヴァネッサ先生たちが怖くならないようにあたしたちがしっかりついていてあげるからね」

「ヒナタのにーちゃんなんだってな。よろしくな!大丈夫、この中ちょっとまぶしいくらいだからよ。オレたちについてきな!なあみんな」

残りのフェアリーたちもそんなイーファの言葉に元気よくうなづく。

「・・・こいつぁ、可愛いガイドさんがついたもんだな」
「ええ。よろしくね・・・レイアちゃんv」
「?アレ?ヴァネッサさんオバケキライなんじゃなかったっけ?」
「このコ達オバケじゃないからね。さっきはビックリしたけどもう大丈夫よ。イリーナさん。お待たせしました」
「ハイ♪」


そう言って残ったヴァネッサ達も、フェアリーたちと一緒にゲートの中へと消えた。






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「・・・・ま、マジか?コレ?」

「ココが?・・異世界?」

「ホントに?ホントのホントの異世界か?」

「まるで地球じゃないか」

「ああ・・・空気中の酸素、太陽、適度な湿度・・・まさに地球の環境そのものだ。」

「ココが本当に異世界なのだとしたら、大した発見だぞ」

「はあ・・たまげたな。想像以上だ全く・・・」

「・・・ここが魔法の別世界・・・」

「グローリー・・・グラウンド・・・」



目の前に広がる景色に、南陽生、ラモン、火引弾、東一哉、近藤勇蔵、土方歳武、二階堂紅丸。そして草薙京とヴァネッサは思わず唖然として呟かざるを得なかった。


ワープで通ってきた光のトンネル。
あまりもの想像を超えるファンタジックなトンネルにも驚いたが、この景色はそんな驚きをも打ち消すほどに彼らに衝撃を与えていた。

空気、温度、湿度、風、太陽の光。
そのどれもが自分たちが住んでいる地球のそれとまるで変化がなかったのだ。
こんなことがあり得るのか?

子ども達はなんの疑問もなく、自分たちがここにたどり着いた時には『ついたついたぁー♪』と低学年組を筆頭にすでにその辺の野原を走り回って遊んでいた。
ボーッ・・とまるで阿呆のように呆けている大人達にイリーナが一言。

「ようこそ!グローリーグラウンドへ!いかがです?」

「あ・・ああ・・い・・いかがって言われても・・」
「ね・・ねえ。でも・・・似てるわねぇ・・」

「そうでしょう?ライドランドによく似ていませんか?きっとすぐに慣れていただけるはずです」

ニコニコと屈託なく笑うイリーナ。
しかし近藤はまだ疑念が消えなかった。

「イリーナさん。ここは本当にアンタの言う地球・・・いや、ライドランド・・だったか?そことは別の世界なのか?」

「ハイ。その通りです。」

「俺にはどうも信じられん。ここが同じ地球ではないとなぜ言いきれる?こんな環境が瓜二つの都合の良い異世界があるのか?」

イリーナは少し困惑したような表情を見せた。
勇蔵は幾分気が咎めたが、言わなければならないことは言っておく必要がある。子ども達を連れてきている以上彼等には責任があるのだから。
このイリーナという少女が自分たちを担ごうとしている恐れが無いわけではない。
しかし、そんな問いに答えたのは、イリーナではなく土方歳武だった。


「・・・・勇さん。どうやら、その人の言っていることは真実のようだ」

「トシ?」

土方はゆっくりと立ち上がると、手に何やら花を摘んで勇蔵の方へと持ってきた。


「・・・コレは・・タンポポ・・か?」
「いや、似ているが違う。色も、形も微妙に・・・こんな植物は地球上には存在せん」
「・・・確かか?」
「薬学と生物学の博士号を俺が持っていることはアンタもよく知ってるだろう」


歳武の言葉に勇蔵は納得するしかなかった。
実際歳武は薬学と生物学の博士号を大学の在学時に取得しているが、ただの博士号ではない。
それは世界に名だたるアメリカのハーボード大学が主催する特別な試験だった。
つまり、歳武の薬学。生物学の知識は、一流学者並ということになる。
その歳武が地球上に存在しないと称しているのだからそうなのであろう。
勇蔵は短く首を振るとイリーナに「すまなかった」と短く言った。



「オーイ、先生たちー、いかねえのかぁ〜?先に街行ってるぞぉ〜」


そうこうしているうちにアキラの声が響いた。
丘の上に立って保護者の集団に手を振っており、他の子ども達もその周囲に集まっている。


「丘の向こうに見える街が、王都レインヴァードです。ご案内しますわ」

そう言われてヴァネッサ達も子ども達が手を振っているその先の街、レインヴァードの方へと足を運びだした。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「ここが、そのアドベンチャラーギルド?」

「思ってたよりおっきぃ〜・・・」


目の前の建物を見て、悠奈と七海がそう漏らした。
大きさはいつも七海がスケートを習いに通い、悠奈も何度も訪れたJTスポーツクラブを少し小さくしたくらいの門構えだろうか?
ともかく2人の予想よりも大きな造りだった。
入り口を見れば、重厚そうな鎧を身に纏った戦士や、ローブを纏った魔法使いらしき人、ライトアーマーを身に着けた身軽そうな剣士などイリーナの言うような冒険者たちが大勢出入りしていた。


「ふわぁ〜・・見て見てナミちゃん!サラちゃん!あの人たち!スゴイスゴイスゴぉ〜イ♪」

「うわぁ・・マジに映画とかで見たことある鎧だぁ・・ムードたっぷりってカンジするなあっ!」

「アレって魔法使いの人かなあ?でもホウキで空飛んでる人はいないんだ。その辺はちょっとイメージと違っちゃったな」

「いかにも冒険者ってカンジの人がたくさんいる・・・ねえ、ヒカルくん、オレたちもこの中に入るのかな?」

「そうなんちゃうか?ちょっとコワイんか?ヤオ」

「安心しろって、オレ達がついてるからよ」

「ビクついてんじゃねえよ。入りたくなきゃオメーだけ外で待ってろタコ」

「れ・・レイちゃん・・・そんな言い方したら可哀想だよ」

目の前に広がった建物を前に、それぞれ思い思いのことを口に出していた。
興味、興奮、不安、期待。
様々な感情がセイバーチルドレンズのメンバー達の心を満たしている。
イリーナの話にあったアドベンチャラーギルド、その佇まいは子ども達の心に正に十人十色の心情を引き出していた。

それとは対照的に・・・



「オイオイオイ・・・ジョーダンじゃねえぜ。いつの時代のドコの国だココは?」

「少なくとも日本じゃねえこたぁ確かだよな。なんとなく建物とかも洋風だし・・・ケド・・今の時代じゃねえよな・・・」

「ああ、まるで・・・おとぎ話とかゲームの中に出てきそうな・・・」

「俺はそれより・・・さっきからチラホラ見るあのトカゲか恐竜みたいなあの生き物が気になるっス・・・アレってどう見ても・・・」

「・・・一哉くん、これは・・・夢じゃないんだな・・?」

「え・・ええ、恐らく・・・ここが王都レインヴァードですか・・・」

「街並みは中世・・・いや、少し近世よりかもしれんな。ヨーロッパの風貌とアメリカの一部地域の風貌を合わせ持ったような独特の雰囲気だな。しかし・・・本当にこんな世界があるとは・・・」



「オイ、ヴァネッサ先生よぉ・・こいつぁ・・」
「言わないで京くん!今・・・この私の目の前で起こってるこの状況、必死に整理してるとこだから・・・」




大人達はアドベンチャラーギルドの建物云々ではなく、このレインヴァードの国の街並み、それ自体に圧倒されて言葉も思うように出なかった。
正にロールプレイングゲームや童話に出て来る中世〜近世のヨーロッパの街並みそのもの。
所々にやや近代的な造りの建物は散見されるものの、その雰囲気や、街を横断する恐竜のような生き物。待ちゆく人々の容姿、街の喧騒。
一目でココは現世に存在する世界では無い事が見て取れた。



本当に異世界があった。



「・・・イリーナさん。どうやら、貴女の仰っていたことは正しかったようだ。疑ってしまったこと、この通り、すまなかった。許してくれ」

「そんな、近藤様、いいんですよ。信じられないのも無理はありませんもの・・・そんなことより、早く子ども達と一緒にギルドの中に入りましょう」

そう言って頭を下げる勇蔵に、イリーナは気にしていないということをアピールするかのように首を振って微笑んだ。その表情に、勇蔵は苦笑する。
今まで自分が悩んでいたその問題はどうやらイリーナにとっては「そんなこと」だったようだ。



イリーナに連れられてギルドの中に入った悠奈たちセイバーチルドレンズとフェアリー、それにヴァネッサ達大人集団は、アドベンチャラーギルドと呼ばれた入口ロビーで思わず目を見張った。

ある程度予想はしていたが、表を遥かに上回る数の冒険者と思わしき人間たちでそこは溢れていた。
そこかしこで剣を手入れする戦士や雑談するローブを身に纏い、独特のアクセサリをつけた術師らしき者、軽装のライトアーマーに短剣や弓を装備した身軽そうな戦士たちも見られる。


「スッゴ・・・ってかちょっとコワ・・・ねえ、レイア。ココって大丈夫なの?」

「うぅ〜ん・・イリーナさまがいるから多分大丈夫だと思うけど・・・」

「でもさあ・・イーファ・・」

「どうした?ヒナタ?」

「オレたちさあ・・・さっきから、見られてない?」


と、日向がぎこちなく漏らした。
中の光景に興奮してキョロキョロと辺りを興味津々に見回していた悠奈たちであったが、次第と逆に自分たちが注目されていることに気が付いた。
興味ありげに不思議そうな眼を向けている奴もいれば、妖しい人物を牽制するように不審気に見つめている輩もいる。
慣れ親しんだギルド内に、突然自分たちとは大きく出で立ちの異なる一集団が現れたのである。
しかも中の10人ほどはまだ年幼い子どもである。一体この大人の冒険者たちが集うギルドに何用でやってきたのか?
そんな疑問の目を受けている彼等に、受付の奥にいた老年の男性が笑顔で手を振りながら声をかけて来た。



「これはこれは、イリーナ姫様。あ、いやいや、今は女王陛下でしたな。お待ちしておりました」

「ベイル会長。お久しぶりです」

長い白髪を後ろに流し、眼鏡をかけた柔和な顔。
紫色に所々金の刺繍があしらわれた魔法術師が着るようなローブを纏っている。彼もまたそうなのだろう。


「ようこそ、我がアドベンチャラーギルド・レインヴァード本部へおいで下さいました。あなた方を心より歓迎いたしますよ。セイバーチルドレンズの皆さん、そしてその保護者の方たち」


「え?アタシたちのコト知ってるの?」

「もちろん。既にイリーナ女王陛下よりお話は伺っております。レイア、それにイーファ、ウェンディ、ユエ、ヴォルツ、バン、リフィネ、クレア、ルーナ、ケン。あなた達もお疲れ様でしたね、よくぞ彼らを見つけてくれました」



「うん!ベイル先生!レイアたち頑張ったんだよ♪」

「ま!レイアだけなら心配だったけどオレ達がついてたからな」

「みんなで力を合わせた結果です」

「せやな〜、ワイかて一時はホンマに集まるもんか思ってたケド・・・なんとかなるもんやな!」

「燃える心があればどんなツライことだって乗り越えられるってもモンよ!うぅ〜〜っボンバあぁー!」

「ベイルさまもお元気そうで何よりです」

「まあ、メンバーを連れて帰った瞬間、嬉しくて心臓発作!・・てのも面白かったかもしれないけどねv」

「べいるのおじーちゃん、ルーナつかれたでしゅぅ〜、はやくフェアリープリンをたべておひるねしたいでしゅ」

「ルーナの言う通りだな。オイ、ジジー。オレはポーションサイダーだ、ノド渇いてんだよとっとと出しな」



「って、アンタたちもこの人と知り合い!?」

「もっちろん!だって、このベイル先生があたしたちフェアリーの魔法の先生なんだよ」

「へぇ〜・・・このおじーちゃんが・・・」


悠奈は目の前で優しそうにほほ笑む老人を見て、この人がレイアたちの先生?
小さくないんだ。

と、少々不謹慎なコトを考えていた。
そんな悠奈の思考を遮るように今度はヴァネッサがベイルとイリーナに質問する。



「あ、あの・・・スミマセン。わたし、ヴァネッサと言います・・・先程、わたし達のお話を聞いていた・・とおっしゃってましたが・・その・・いつ?」

「それは、俺も気になっていた。イリーナさんとは先程お会いしたばかりだ。そしてあのゲートとやらを通ってココに一緒に来た。一体いつの段階で俺達の事を聞いたんですか?」

「イリーナさまより、フォースにてお聞きいたしました」

『・・?フォース?』

「魔力を用いたテレパシーのようなモノですよ。修練を積むコトによっていかなる場所においても通信することができるのです。あなた方の事もお聞きしております。ヴァネッサさま、東一哉さま、草薙京さま、近藤勇蔵さま、土方歳武さま、二階堂紅丸さま、ラモンさま、火引弾さま」




『・・・・・』




寝耳に水とはこのコトである。
魔法とはかくも便利なものなのか?
予想を遥かに超える世界観に、魔法の利便性を思い知らされ、さらには予期していなかったところから自分の名前まで知られていることに、大人連中、皆全員一致にて目をテンにして驚き戸惑っていた。



「・・・スゲーな魔法って・・・そんなコトまでできんのか?」

「便利なモンだ。サイキョー流に欲しいくらいだな・・・俺も魔法習ってみるか?それでそれをサイキョー流魔法格闘技に昇華させていずれは道場を・・・」

「そんなコトができるなら・・・魔法でカワイコちゃん達のスリーサイズを・・・vv」