「おおぉおおっっ!?スッゲぇえーーっ!手から・・なんか宝石みたいなもんが光と一緒に出たあぁーーっ!」

「それがダイヤニードル、地属性攻撃魔法の初級魔法よ、呪文は今言った通りだけど、マジックパワーを消耗するし、仲間や物に当てるとケガしたり壊しちゃったりするからなんでもかんでも使っちゃダメだかんねサラちゃん」

「へへっわかってるって、いやぁ〜・・スッゲエなこの力。コレがあればアニキにも勝てるんじゃねえの?」

「またぁ、だからダメだってサラちゃん、魔法そんなコトに使っちゃ・・・」

「ハイハイハ〜イ♪サラちゃんどいてどいてぇ〜v次はウチの番ねえ〜、えっと・・・なんやったっけかな?なあウェンディ〜」

「もう、忘れちゃダメでしょナナちゃん、ちゃんと呪文覚えてくれないと・・」

東京の新興住宅地、そのニュータウンに隣接するように設けられた大きな児童公園の森の中、人目のつかない場所でそんな子ども達数人の声が聞こえた。
ココは付近の子どもたちの隠れた遊び場となっている。人目につかないこの森は本来大人の目が行き届かないため子ども達は原則立ち入り禁止となっているのだが、そんなことはどこ吹く風。子ども達は周りから少し遮断されたように感じる森の中に入り、秘密基地を作ったり色々なおもちゃを持ち込んだりして遊んでいるのだ。
その一角。
大きな巨木の周囲に何やら子ども達が集まっていた。
普通の子ども達が遊んでいるのとは明らかに様子が違う。

「大いなる水の精霊ウンディーネよ、凍結の力をもって目の前の邪なるものを射抜け・・アイススパイク!」

そんな女の子の声が上がると、どこからともなく少女の掌の中に氷の刃が召喚され、宙を疾駆して目の前に立っていた巨木に突き刺さった。

「きゃぁ〜やったぁ〜v」

「へえ、ナナミすごいじゃん。ちゃんと当たってる当たってる」

氷を召喚した赤髪の少女は横からかけられた声にVサインで反応した。

「よし!ならちょっと休憩しよか。朝っぱらからみんなお疲れさん!弁当とお菓子持ってきたさかい」

「うわぁ〜〜いっ!レイくんパパのサンドイッチだぁ〜〜っ!」

「きゃ〜〜vヴァネッサセンセーのケーキもある!食べよ食べよvオナカへったぁ〜♪」

アジアンブルーの黒髪の少年、久遠光が声をかけて弁当箱を開く。
歓声を上げて煌窈狼や香坂七海が光の周りに集まると他の子ども達も寄ってくる。
光は甲斐甲斐しくその子どもたちにサンドイッチやお菓子を配ったり飲み物をコップに注いだりしていた。

今日は6月も中程に差し掛かった土曜日。
ちょっと動いたら汗ばむほど暑くなってきた季節の休日に、愛澤悠奈とセイバーチルドレンズのメンバー達は久遠光と南晃の提案で、魔法の特訓に来ていた。
ダークチルドレンズの襲撃をなんとか撃退し続けてきた彼らだが、この前現れたユイトという少年、予想を遥かに超える強さだったのだ。
恐らくその実力、今現時点では光や晃でも敵うかどうかはわからない。もし敵方に彼以上の実力者がいたとしたら?そう考え、2人は今日覚えた魔法を特訓してもしまたダークチルドレンズが攻めてきたときにも大丈夫なようにメンバーに召集をかけたのだった。
それと気になることがもう1つ・・・



「ダークチルドレンズの中にはオレらの知り合いもおったっちゅうこっちゃ・・・」

持っていたレモンティーを飲み干してから、光が不意に呟いた。
光の沈痛そうな声に晃と咲良、那深も無言でうなづく。悠奈たちもなんと声をかけていいのかわからなかった。

今、悠奈たちと敵対し、ダークチルドレンズとして悪の魔女、メイガス・エミリーの手先となっている子ども達。そのメンバーの中に、光や晃の知り合いの子が何人かいたのである。
今のところ発覚しているのはミウという女の子と、この前のアカネ、ジュナ。敵とは言え知った中であるこの子達を相手に如何にして対処すべきか考えあぐねているところであった。

「ったく、なんでアカネとジュナのヤツ!エミリーとかいう悪いヤツのいいなりになってあんなコトしてんだかわからねえ!」

「ミウもそうや・・・一体どうして?」

怒ったように言う咲良と困り果てた表情で溜息をつく光。多少反応は違うが自分達と対立してしまったことに対して悩んでいるコトは確かだった。悠奈が顔を見ると晃と那深も似たような顔をして考え込んでいる。

「ねえ、ヒナタくん・・・なんとかならないのかな?」

悠奈がサンドイッチを頬張っていた日向を見て尋ねると、日向も少し俯いて考え始め、こう言った。

「えっと・・・アカネ・・とジュナだっけ?この前の双子のダークチルドレンズのヤツラ・・」

「そうそう!アタシもビックリしちゃってさあ・・まさかアカネちゃんとジュナちゃんがねえぇ〜・・・」

「そう言えばナミちゃんも知ってるコやねんな?どんなコなん?教えてんか?」

レモンティーに砂糖をたっぷり入れながら自分を見つめる七海にそう言われて那深は「えっとね・・・」と言ってから話し始めた。

「アタシの隣のクラスで、稲宮樹菜ちゃんと朱音ちゃん。双子の姉妹なんだって、パパが警察署の署長さんで、ママが女子プロレスラー。2人とも運動神経がとってもよくってそれで結構人気あったんだよね〜・・で、まあアキちゃんとサラちゃんは小さいころから仲良しでよく遊んでたって聞いてるけど、サラちゃんとアカネちゃんはよくケンカしてたような・・」

「あれはアイツから突っかかってくるんだよっ!ったく、考えてみりゃいっつもいっつもアカネのヤツったらあたいの気に入らねえコトばっかり言ってきやがるしよぉ・・ったくムカつくったらねえぜ」

思い出したようにグチグチと文句を言う咲良をまあまあと窈狼が宥める。これと言って気に留める様子もなく、那深は話を続けた。

「最近、学校で姿見なかったケド、同じクラスじゃないし、そんなに気にならなかったけど・・まさかあんなコトに手を貸してたなんて・・・」

「オレの方が驚いたぜ、一体何があったってんだ?」

悔しそうに唇を噛む晃、情に深い晃のこと、きっと敵方になっても幼馴染である彼女たちのことを心配しているのだろう。悠奈は晃の姿を見てなんだか胸が痛くなるような気がした。
そんな晃を気遣ってなのだろうか?肩をポンと叩いて光が晃に声をかけた。

「ま、アイツらをあっち側から助け出すためにも、オレらはオレらで出来る事せなな」

「ヒカル・・・」

「ん!ナミ、確かレナのヤツ、アカネやジュナと同じクラスやったな?」

「あ!そうだそう言えば!」

光の言葉に手を叩いて思い出した!というように返事する那深。その那深にニコっと笑いかけて光はさらに続ける。

「?レナ・・って?」

「ああ、レナちゃんか。ユウナまだ会ったコトないんだよな。ナミちゃんたちと同じ幼馴染で、最近デビューしたアイドルだよ」

「は・・はいぃ!?アイドル〜?」

「知らんのか?星原麗奈(ほしはられな)ちゃんっていうねんケド・・まあ、まだ4月にデビューしたばっかやしなぁ。ウチにもようやく歌番組の初出演決まったとかメール来たし、まだそんなにメジャーじゃないかな?」

「へ・・へぇ〜・・い、いろいろ・・ホント色々スゴイんだね、ヒナタくん達の知り合いって・・・」

またしても思いがけない真実に圧倒されそうになる悠奈の頭を光がくしゃくしゃと撫でながら「ま!芸能人や言うてもレナはレナやさかい!ユウナのコトもきっと気に入る思うで♪」と笑って励ました。

「よっしゃ!んならレナに直接聞いてみるか。今レナ家におるかな?」

「あ〜、でもあのコ今日お仕事のハズだよ。確かレナのママが言ってたような・・・」

「う〜ん・・仕事かぁ〜ってコトは、セントスタースタジオにおるんかな?」

「ううん。確かねえ・・・今日のお仕事はぁ・・・」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「どうしたのジュナ?顔色悪いじゃない」

「・・・なんでもないわよ。ほっといて!」

ダークチルドレンズアジト。
2階にあるベランダのテラスで1人物思いにふけっていた桃色の髪の少女、ジュナに、背後からライトブラウンのロングヘアの少女、サキが声をかけた。
自分をバカにするように見下した薄笑いに、ジュナはサキを軽く睨んでから吐き捨てるように言った。しかし当のサキは全く意に介さず逆にジュナを逆撫でするように続ける。

「あれだけ大見栄きっといて姉妹の連携だどうとか語って、無理やりアカネまで連れてってねえ・・結局逆にやられちゃうなんて。しかももう1人セイバーチルドレンが覚醒したんですって?アハハッv無様ね」

相変わらずの態度。
ジュナは目の前のサキにも腹が立ったが、それ以上に自分達を散々コケにした悠奈たちセイバーチルドレンズにもことの他頭に来た。
アイツらのせいで自分はサキや他のメンバー達に白い眼で見られている。面白くない。せっかく普段の折り合いの悪さやプライドを捨てて妹とタッグを組んでまで挑んだというのに・・・

「・・・うるさいわね!アンタにはカンケーないじゃない!それにアンタだってまだ失敗したまんまでしょ?人のことより自分のコト心配したら?」

「フン、言われなくたってわかってるわよ。それにしてもヤツラ、一体どこまで仲間増えるのよ?」

「さあね。もしかしたらアタシらと同じくらいメンバーいるんじゃない?」

「だとしたら思いっきりメンドウよ。メンバーがそろいきっていない今のうちになんとか倒さなきゃ・・・」

「失礼します」

と、2人が憎まれ口を叩きあいながらも今後の計画を話し合っていると2人の背後から声が掛けられた。
背後には、長身でスラっとした体格の青白い顔をした男性が立っていた。

「サキさま、藤崎様がお見えです。お仕事のお時間かと・・・」

「うるさいわねいちいちと、アタシを刺激するんじゃないわよコズン!今行くから藤崎さんにはテキトーに言っといて!」

「かしこまりました・・・」

「・・・ねえサキ。いつも思うんだけど、アンタってコズンに対して態度冷たくない?」

ジュナが奥へと引っ込んだ世話役の使用人を眼で追いながら、サキに尋ねると別段悪びれもせずにサキはこう答えた。

「だってわかりきってることいちいちウダウダと聞いてきて・・ウザイのよ正直、それよりも今後のコト考えないと・・・もう一度アタシが行って・・・」

「ちょっと待ちなさいよ!」

不意に上部から投げかけられた声、先程の使用人ではない。見ればオレンジがかったブラウンのロングヘアが美しい可愛らしい女の子が不敵な笑みを浮かべて階段の上からサキとジュナを見下ろしていたのだ。

「サキもジュナももう2回もその子達と戦ってるんでしょ?だったらココは平等にいきましょうよ。次はアタシの番ってコトで!」

「ナギサ・・」

「アンタ、いつからソコにいたのよ?」

ナギサと呼ばれた少女は、ウェーブがかった長めの髪を掻き上げながらサキとジュナの前に歩み進んで来た。

「アンタたちには無理でもアタシの魔法でなら、アタシならあのセイバーチルドレンズを仕留められる」

そう言うナギサの言葉に一瞬眼を暗くして彼女を睨みつけた。自分がタッグを組んでも無理だったものをいとも簡単に仕留めると言ってのけたナギサに対してジュナはことさら鋭い視線を叩きつける。その目を感じ取ってかナギサは肩をすくめて笑いながら言った。

「そんなに怖いカオしないでよジュナ、目的が果たせるんなら誰がやったっていいじゃない、ね?サキ」

「・・・果たせるなら・・・ね」

「何よその態度、カンペキにナメてくれちゃってるわねぇ〜、ま、いいわ。次に会う時はアンタたちの目の前でエミリーさまに褒めてもらっちゃうかんね〜だ!じゃ、ちょいちょ〜いと行ってくるわ!」

そう言って軽やかな足取りで準備のために自室に向かうナギサ、その後ろ姿をジュナは射るような瞳で悔しげに見つめていた。

「・・・なんだ、やっぱり悔しいんじゃない」

「うるっさい!ほっといてよ!」

「まあ、ナギサのお手並み拝見といきましょうよ。アタシたちの目的はただ1つ。エミリーさまのためにセイバーチルドレンズを倒し、そしてフェアリーレイアを捕まえること。それができるなら、誰だってかまわないわ」

冷静に言ってさっきコズンに仕事だと呼ばれていたのを思い出したのだろう。サキは急ぎ気味に仕度をすませると携帯電話を取り、どこかに連絡を取りながらその場を離れた。
後に残されたジュナは、イライラと手持ちぶたさが重なったのであろう。広間の大きなソファにどかっと乱暴に座りこむと、クッションを荒々しく蹴り飛ばして寝っ転がると、そのまま持っていたゲームの電源を入れた。


「おいおいユイトぉ〜、まぁたアイツらケンカしてるぜぇ〜?きゃはははっ!おっもしれえでやんの♪」

「ほっとけよ。関わるとうざってーぞ」

そんな3人の様子を館の屋根から伺っていたレムは傍らの少年、ユイトにそのことを伝えた。が、ユイト本人はまるで気に留める様子もないようで日向ぼっこよろしく、屋根の上でのんびりと昼寝をしている最中だった。

「なあ、今日どっか遊びにいこーぜユイトぉ!ヒマだってばよぉ〜」

「ああ?だりぃだろ」

「いやだあ〜っいこーぜいこーぜ、なあなあなあぁ〜〜〜っっ!」

「ああ、ったく、うっせえなあ。わかったよ。明後日久々にガッコー行くからついて来いよ」

「ホントか!?ガッコー行くのか!?いやったあぁ〜〜〜っ♪」

屋根の上でそんなどうでもいい日常の会話が繰り広げられた。
ドコにでもありそうな会話。
ただ一つ大きく普通と異なるのはその話相手が片方は人間ではなく妖精であるとのことだけだろう。




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「おーい、レナちゃん。キミにお客さんだよぉ」

「ほえ?お客さん?だあれ?」

聖星町の駅前近くの繁華街、その外れの住宅地との間に巨大なスペースを有するJTスポーツクラブ。
そのビルの前で、「イーストサイドストーリープロ」と書かれている。1台のロケバスが停車していた。実はこの会社、東グループが最近子会社として立ち上げた新興芸能プロダクション会社である。
サイキョー流格闘技道場に通うお笑い芸人たちが主に所属していたが、今年に入ってアイドル育成にも着手しはじめた。今、バス内でディレクターに声をかけられた少女こそ、記念すべきその1人である。

「おっすーvレーナ。調子ど〜お?」

「あーーーっvナミちゃんだあぁ〜っうわぁ〜いナミちゃあぁ〜〜〜んっ♪ww」

ロケバスに入って来たお客さんというのが赤ん坊のころからまるで姉妹のように育った幼馴染だったことに気づいて、金色の髪を振り乱して彼女はその子に抱きついた。

「ちょっ・・ちょっとレナ・・くるしぃ・・ってば」

「わーいわーいvえへへへぇ〜wどーしたの急に?」

「今日のお仕事Jスポでちびっ子スポーツクラブの突撃レポートと歌の披露だったこと思い出してさ、会いに来ちゃった、ちょっと相談したいこともあってさ」

「ほえ?そーだん?」

「よぉ〜、レナー」
「悪りいな、忙しいトコ。今大丈夫か?」

「あー、ヒカルちゃんにアキちゃんだぁー。それにヒナちゃんもナナちゃんも、ヤオくんにサラちゃんまで!およよぉ?みんなどしたのぉ?」

「ゴメンねレナちゃん、おしごとなのに・・」

「おう、ちょっとおめえに聞きてえことあってよ」

「うにゃ?レナに聞きたい事?なになにぃ〜?まだ本番まで時間あるからだいじょーぶだよぉーv」

突然の友人の訪問に少々ビックリしたが、レナと呼ばれた少女は尋ねてきた友人たちを歓待した。
この女の子が、那深の一番の親友にして幼馴染であり、日向や光たちとも仲の良い星原麗奈であった。
幼いながらも抜群に愛らしい顔立ちで学校内にはファンも多く、この4月からはとうとう新人ながらアイドルデビューまで果たした。
まだまだメジャーではないためそこまで忙しくは無いが、学校の他に休日にこのようにして仕事が入る日も時々ある。
芸能界のルールや規則など、まだ麗奈は無知なことも多いためか仕事のスケジュールをメールで安易に那深に知らせてしまったため、このように那深たちが訪ねてくる結果になったのだった。
もっともディレクターからマネージャー、プロデューサーに至るまで元々は東グループの社員であるから光たちのように上層部と繋がりの深い人物たちは会おうと思えばある程度融通は利くのだが・・・

「アレ?その子は・・・」

「あ・・えっと・・ど、ども・・」

麗奈は不意にいつもの友達の中に見慣れない女の子が入っていることに気がついた。

「アナタ、だあれ?」

「え・・えと、新学期に転校して来た・・その、愛澤悠奈です・・。あ・・あの・・ヨロシ・・」

「ウッソぉ〜〜っ!アナタがあの学校中で話題のウワサのクール&ビューティーのスーパー小学生のユウナちゃん!?」

もはや否定する気も起きず、悠奈は溜息をついて自分の紹介を那深に任せることにした。

「そうそう!この子が噂のユウナちゃんです!」

肩を掴まれ麗奈の前に引き出される悠奈。
初対面の相手の前にいきなり突き出され、悠奈はなんともいえない居心地の悪さを感じたが、直後、麗奈がそんな居心地の悪さを強引に払拭した。

「きゃあ〜〜〜っっ♪ホンモノの生ユウナちゃんだぁ〜〜っ!はじめましてぇ〜vナミちゃんとかナナちゃんからきいてたケド、ホントに可愛いコなんだねぇ〜。なんか嬉しいな!ねえねえ!レナとおともだちになって!」

「へ?あっ・・あのっ・・いやちょっと・・」

「ねえいいでしょぉ?ねえねえねえったらぁ〜〜」

「うぅ・・は、ハイハイハイ!わかったから・・・ちょっと、はなし・・てっ」

これほどフレンドリーな対応もないだろう。
初対面であるハズの悠奈に、この麗奈という少女、あろうことか全力で抱きついてギュウギュウと熱烈なハグを行ったのだ。
まるで欧米人のような歓迎の仕方に、悠奈は目をシロクロさせて驚いた。やっとのことで返事をすると麗奈は悠奈の返事にきゃあきゃあ言って喜んだ。

「やったあぁ〜〜〜vね、ね!ユウナちゃん!後でメルアド交換してぇ。今度のお休みとか一緒にあそぼっ!」

縦横無尽にはしゃぎまくる麗奈。
光たちより1つ年下というから咲良や那深と同い年で悠奈たちよりも2歳も年上のハズなのだが、先程からの態度を見ると悠奈や七海たちよりも幼く感じてしまう。
なんか、この人も色んな意味でスゴイ人だなぁ、と悠奈はまた新しく面喰ってしまった。

「ま、紹介もすんだところで・・・実は今日な、オレら遊びに来たんとちゃうねんレナ。ちょっとお前に聞きたい事あってな」

「・・・聞きたい事?あっ、そかそか。言ってたね。ナニナニ〜♪?」

「ま、大したことじゃねえよ。最近レナのクラスでだけどさ・・・」



「うん、今年に入ってから。最初はちょっとお休みがちなだけでちょこちょこ来てたんだけど、最近は全然見てないなぁ・・かれこれ3週間くらい。センセーは2人ともお家の都合でだから、とか言ってたけどなんかあったのかなぁ?」

「そうか・・・やっぱりな」

「ほえ?何がやっぱりなのアキちゃん」

「あ、ああなんでもねえ、コッチの話だよ」

「?・・そう?なんかコワイお顔してるよ?レナ何か悪いコト言っちゃった?」

「い、いや、全然レナのせいじゃねえよ!ゴメンな」

話がズレそうだった女子連中を何とか収め、この間現れたジュナとアカネの学校での様子を麗奈から聞き出そうと光と晃がさり気なく話題を振ってみたところ、案の定の答えが帰って来た。
今年に入ってから・・という麗奈の話から推察するに、おそらくその辺りからダークチルドレンズにジュナとアカネは加担しだしたのではないだろうか?
そう考えると知らず知らずのうちに光も晃も表情が険しくなる。小さな頃から2人と付き合いの深い晃や咲良などはことさらそうだった。
そのことを感づかれたので、晃は慌てて平静を装う。

「レナ、ジュナちゃんとアカネちゃんさあ、もしガッコウに来たらアタシたちに知らせてくれない?」

「?・・別にいいケド・・ケンカでもしてるの?」

「け・・ケンカ?・・って言われると・・・う〜〜ん・・・ま、似たようなもんかな?」

「そっかぁ〜、うんわかった!じゃあ今度見かけたら連絡するね」

那深は笑顔で自分に元気よく答えを返してくれる麗奈を見て思わず笑みが漏れた。
多少子どもっぽくて年齢より幼く見える彼女だが、最大の長所は、この誰にでも優しく、人懐っこくて無邪気な性格なのだろう。
そんな麗奈の目の前に、先程までレイアの隣でこっくりこっくりとうたた寝をしていたフェアリー、ルーナが近づいて行った。

「!・・るっルーナダメよ!こっちいらっしゃい!」

「えぇ〜?だぁってぇ〜、このコからルーナ、強い魔力を感じるでしゅう〜」

レイアが注意したが、ルーナはかまわずそのまま麗奈の方へと飛んで行ってしまった。

「こんにちわでしゅう!ルーナでしゅう、はじめましてでしゅっ!」

「!?・・・え?何?今誰かなんか言った?」

普通の人間にはレイアたちフェアリーの姿はもちろんのこと声も聞こえないハズ。にもかかわらずこの麗奈という少女、今確かにルーナの声に反応した。
その場にいたメンバー達全員が今までのメンバーになった子ども達誰にもなかった反応に息をのむ。

「レナちゃーん。そろそろ出番だよぉ〜、スタンバってー」

「あ、ハーイ!オッケェ〜いまいくねぇ〜・・・なんだろ?気のせいだったのかな?あ!ねえねえプロデューサーさんにお願いしてみるから、良かったら今日のロケ、ゲストとしてみんなも出てよ!ね?」

「あ?・・お、おお・・せやな・・」

「か、考えてみるぜ。な?ナミ、サラ」

「う・・うん」
「そだな・・アハハ、テレビかあぁ〜・・・」

「えへへv約束だよ♪」

そう言って麗奈はそのままロケバスを降りてJTスポーツクラブ内へと入って行ってしまった。

「・・・レイア・・・もしかしたらあの子も・・・」
「うん、ユウナちゃん。あのレナちゃんてコ・・・強い魔力を持ってる・・!」




「それじゃあ・・本番いきまーす。よーい・・・アクション!」

ディレクターの声とともにカン!という拍子木がなる。
その一瞬後に、星原麗奈は満面の笑みでカメラに向かってセリフを発した。

「こんにちは〜vキラキラきらりん♪アイドルワールドにお星さまレボリューションしちゃうぞ!星宮レナで〜〜っす!きょうはぁ〜、レナもよく知ってるJTスポーツクラブっていうおっきいスポーツジムのキッズレスリングクラブにきちゃいましたぁー。レスリングってぇ、レナちょっと怖いイメージあるんだけどぉ〜みんな笑顔で楽しそうにやっててレナびっくり!どんなコトしてるのかぁ、講師の先生に聞いてみたいと思いますvコチラが講師のラモン先生でーっす!今日はよろしくおねがいしまーす♪」

「ハーイwどーもこちらこそよろしくお願いしまーすvラモンでーす」


「・・・オイ、ヒカル。ラモンのヤツいつインタビューなんか予定入ってたんだ?」

「はあ?そんなん俺に聞いたかて知らんで」

「くそう!気に入らねえっ!レスリングなんて地味なスポーツよりもっとサイキョー流を宣伝すりゃあいいもんを・・・」

撮影の様子を少し遠めから見ていた二階堂紅丸と火引弾が不満げに光に尋ねたが、そもそも事情を知らない光は紅丸の問いを一蹴した。

「くそう、どーりで今朝から気分よかったハズだぜ」
「取材の話・・・俺らに黙ってやがったなあ、何故だ?俺たちはジョーと違って別に邪魔したりしないってえのに・・・」
「注目を独り占めしたかったんスよ多分、ケッ、ヤツも所詮あの理不尽大王と一緒じゃねえか」

紅丸とダンが顔を寄せ合ってヒソヒソとラモンに陰口を叩く。
どうやら自分たちを差し置いてラモンと彼の教室ばかりが取り上げられているのが癪に触るようだ。しかしそんな大人げない2人の行動よりも、一緒に側にいた子ども達は先ほどの反応が気になって麗奈をずっと見つめていた。

「・・・なんか変わったとこあるか?ナミ」

「ぜ〜んぜん。いつものレナよぉ。大体あのコがアタシたちみたいな魔力もってるのぉ?あんなガキっぽいコが?」

光も那深も怪訝な表情で麗奈を見つめながら言い合うが、その2人の考えをヴォルツとリフィネがそれぞれ正した。

「人は見かけで判断したらアカンでヒカル」

「そうよぉ、ああいう子に限って大きな魔力を秘めている場合があるのよ。現にあれだけハッキリとフェアリーの気配を感じた子って今までいなかったわよもしかしたらあのレナちゃんってコがわたしたちの大きな力になってくれるかも知れないじゃない」

2人の期待を込めた言葉に光と那深はそうかぁ〜?と思い切り疑いの眼差しを、リポートを続ける麗奈に送っていた。当の麗奈本人はそんな視線を感じるコトもなくとうとうとラモンや子ども達にインタビューを続けている。

「なるほどぉ〜・・レスリングって思ったよりおもしろいんだなぁ〜・・ではここでぇ、きんきゅー企画ぅ〜v!ハイ!今日のゲストの女の子!今レナの通ってる私立・天道学園初等部でえ〜、人気爆発中のクール&ビューティーなスーパー小学生!愛澤悠奈ちゃんでーす!」

「え!?・・え・・・えええぇぇえーーーーーっっ!?」
「えええぇぇぇええーーーーーーーーっっっ!!?」

その場に麗奈の明るい笑い声と、悠奈と七海の辺りを切り裂く絶叫があがった。
なんと麗奈がいきなり悠奈の腕を掴んで引き寄せると、強引に彼女をカメラの前に立たせてゲストとして出演させてしまったのだ。
突然のことだったため、カメラマンも困惑気味だったが、ディレクターを確認するとそのままGOサインが出たので取り敢えず撮影を続けることにする。
いきなりカメラを目の前にして悠奈はあたふたと取り乱した。

「どっ・・ど、どーしてアタシがっ!?」

「なっ・・なんでユウナが!?ありえへんっ!」

「そっ・・そーよ!大体聞いてないしっ・・な、ナナミぃ〜・・タスケテよぉ〜」

「ユウナなんかテレビに出させるくらいやったらウチを出せっちゅうねんウチをーっ!」

「ってソッチかーーいっ!!」

ワケも分からないまま突然身に降りかかった状況に悠奈と七海はそれぞれ違った観点から声を上げた。周りにいた他のメンバーも麗奈のいきなりの無軌道とも読める行動に唖然としていた。

「ちょっ・・あの・・ど、どーゆーこと?」

「え〜、だってレナ言ったじゃんさっき、ゲスト出演してもらうよ。って」

「あ・・アレってヒカルくんたちに言ったんじゃなかったの?」

「ううん、レナそんなこと言ってないよ。ユウナちゃんとお友達になれたからぁ、今日はその記念に!とおもってさvえへへ〜v」

突飛な行動に突飛な思考。
いきなりあってそう時間も立たないうちにこんな付き合いの仕方があるものか?七海、咲良、今まで新しく知り合った日向の友達という人物の中にも、この麗奈という女の子ほど発想がぶっ飛んでいる子もいなかった。

「ちょっとレナぁ!いくらなんでもいきなりすぎでしょお?ユウナちゃん困ってるわよぉ?」

「いいじゃんナミちゃん!おもしろいしvユウナちゃんはぁ〜、レスリングやったことありますか〜?」

「は!?」

「レ・ス・リ・ン・グ!」

「やっ・・・たコト・・・ない・・ですケド・・」

「ふむふむナルホドぉ〜・・だってー、ラモン先生!ねえ、ココはひとつぅ、みんなでいつもやってるエクササイズレスリングっていうの教えてもらっちゃおうかなぁ〜?」

「おお!そうかあ?みんなでやるか!?エクササイズレスリング!」

麗奈の唐突すぎる提案に、ラモンが意気揚々と答えるとそれに呼応してかレスリング教室の子どもたちも「やりたい!やりたい!」「やろうやろうっ!」ときゃいきゃいはしゃぎ出した。

「よぉーし、じゃあみんなでやってみようレッツトライ!エクササイズレスリングぅーっ!♪ミュージックスタートぉーっ!」

「きゃあぁーーっ!やったあぁーっウチらもテレビに出れるで!ヒナぁ〜一緒にやろぉ〜v」

「えっ・・ええぇ〜〜?い、いいよぉ〜オレはぁ・・・」

「そんなツレナイこと言わんの!この麗しき美少女ナナちゃんの誘い断ったらバチ当たんで!ホラホラッ!」

「あ・・ナナミが出るならオレも・・・」

「アーキラぁ〜おもしろそうだぜ一緒にやろ?な?な?な?」

「はぁ〜?・・ま、マジにか?」

「乗り掛かった舟やし・・よし!ナミ、オレらもいっちょやるか!?」

「もう、レナったらぁ・・仕方ないなぁ〜♪」

「ハイ!腕上げて、胸張って背筋をの・ば・し・て!タイガーネックチャンスリーっ!♪」

気が付けば麗奈の陽気な勢いに皆が呑まれ、日向たちまでいつの間にか出演し、みんなでラモンが考案したという子どものためのエクササイズレスリングというダンスをみんなでノリノリでやっていた。
麗奈の顔は実に楽しそうで、それがまるで周りにも伝染しているかのようだ。
ただ一人、悠奈だけは



「なんなのよこのムチャ振りぃぃ〜〜〜〜〜〜っっっ」

と非難の叫びをあげていたが・・・





「それじゃあ、今日の仕事これで終わりだから、マネージャーさんには連らくしておくからお迎え待っててね、じゃ、お疲れさまレナちゃん!」

「ハーイ、みんなもおつかれさまでしたぁ〜♪」

「・・・だ、だいじょうぶ?ユウナちゃん・・・」

「・・・う・・うん、なん・・とか・・ハハハ」

「あーー、おもしろかったぁー!みんなで踊ってもうサイッコー!キャハハハハハv今日のお仕事チョー楽しかったぁ〜っ♪」

無事に撮影が終了した後、JTスポーツクラブの休憩室で撮影スタッフと別れた麗奈は、休憩室のソファの上にドサッと倒れこんでおかしそうにきゃらきゃら笑い転げた。
その傍らで悠奈はげんなりとした様子で項垂れている。彼女の憔悴した様子にレイアはもちろんのこと、日向も「ユウナ、だいじょうぶ?」と気づかって声をかけていた。
結果から言えば撮影は成功。予想外のゲストが入ったものの、それが面白い展開として番組を盛り上げるよう編集してくれるとのことだ。まだ麗奈がメジャーアイドルではなく、この番組もローカル放送とのことだからこういう多少のアドリブにもわりとすんなり対応できるのだろう。
悠奈以外の他のメンバー達も、爽やかな汗をかいたのか気持ちよさそうな笑顔を見せていた。
しかし周りの人気がなくなってきた頃を見計らって、光と晃が那深に不意に合図を送ると、那深は了解とばかりに1人まだはしゃいでる麗奈に近づき、いよいよ切り出した。

「ねえ、レナ・・」

「ほえ?」

「これからさあ・・・スゴク・・スッゴォ〜く信じられない話するかもしんないけど・・・落ち着いて聞いてくれる?」

「?ナニそれ?何言ってんのナミちゃん」

「・・・レイア、お願い」

「うん、オッケー」

「?」

一体誰と話してるのか?
麗奈がキョトンとした顔で目の前の那深を見つめる。その間に、麗奈と那深との間に割り込んだレイアが、目を閉じて呪文を唱え始めた。

「この子の中に眠る魔力よ・・お願い、目覚めて・・・ティンクル・ティンクル・マジックパワー・ウェイク・アップ!スタンド・アップ!」

レイアが唱え終えるとその手の中から光の玉が浮かび上がり、そのまま麗奈の額の方へと飛んで入り込んだ。

「んっ!?なっ・・なに?今の・・ちょっとピリッときたような・・・」

「レナちゃん・・・」

「・・・ふえ?」

「はじめましてレナちゃん!グローリーグラウンドのフェアリー、レイアっていいます」

「・・・・・」

「驚かせちゃってゴメンナサイ。実はレナちゃんにお願いがあって・・・実はね・・・」

「おおおぉぉーーーーーっっ!!ナニコレぇ〜〜なになになにナニコレぇ〜〜っ??きゃあぁ〜〜〜っっヤダ!おもしろーーい♪フェアリーって・・妖精!?うわあぁ〜〜っっホンモノ!?ねえねえホンモノぉ〜?」

と、突然に麗奈が大声を上げて興奮した笑顔で悠奈たちを見まわしてまくし立てるように言い放った。
予想と若干違う反応に悠奈も那深も「え!?」と思わず声を上げてポカンと麗奈を見つめていた。
確かにビックリしてはいるが、自分たちのような恐怖にも似た驚き方ではない。まるで目当ての小動物でも見つけたようなはしゃぎようで、すでにレイアを手に掴み、体のあちこちを触ってみていた。

「ちっ・・ちょっと・・ヤメっ・・キャハッ・・くすぐった・・キャハハハハハっ・・ゆっ・・ユウナちゃっ・・たすけっ・・キャッハハハハハッ」

「うわぁあ〜〜・・スゴ〜イ!生きてるぅ〜、ホントにホンモノだぁ〜〜wねえねえ、キミのレイアっていうのなまえ?どこから来たの?ねえねえったら、ねえぇ〜〜」

「・・・スゴイや。レナちゃん、あんまり驚いてない」

「驚いてないどころか・・平気でレイアに話しかけてるぜ?はじめてだってのにあんな余裕の反応ありえねえって・・・」

麗奈の適応力の凄さに遠目である意味感心している日向と窈狼に那深は頭を抱えながら溜め息混じりに言った。

「まあ、度胸があるっていうか・・物事深く考えないっていうか・・・ようはバカなのよねあのコ・・・」




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「う〜〜〜ん・・・イイ天気ねぇ〜vこんな時って学校とかサボって何にも考えないで1日中好きなことして遊びたいモンよねぇ〜・・ま、アタシは今似たようなコトしてるけどねv」

JTスポーツクラブから西側に位置するオフィス街、平日で周りは外回りのビジネスマンやOLの姿が見られた。
その中で1人、小学生くらいの少女が街路樹の側に設けられているベンチに座ってアイスクリームを舐めながら道行く人々の往来を観察していた。

「・・・よくこんな日に仕事とかガッコーとか行く気になるわよね〜、もっと人生楽しめばいいのに」

周囲の人々の真面目さをまるで嘲笑うかのように軽く言葉を漏らすと、ふと上着のポケットから淡いブルーグリーンの宝石を取り出した。
それを指先でピンと弾きながらニマリと周囲の人間を見廻してから楽しそうに言葉を切った。

「んふvきーめた!アタシがもっともっとみんなを楽しませてアゲル!勉強も仕事もみんなメチャクチャにして大混乱させたらチョー楽しいっしょ!」

手早く持っていたアイスをパクッと食べてしまい、宝石を構えて空を見上げると、ナギサは静かに呪文を唱え始めた。

「闇より出でし邪なる石、ダークジュエルよ・・我が魔力に応えその力を示せ!」

ナギサが呪文を唱えるとその掌の中から宝石が空に向かって飛び立ち、空中を疾走してそして電線の上にとまっていたスズメに取りついた。
途端にスズメを黒い妖気が包み込み、紫色の怪しい光とともに、大きなスズメのモンスターを生み出した。

「チュッチュピギョオォーーーーっっ!」

「おわあっっ!?」 「なっ・・なんだあぁ〜〜っ!?」  「デカイ鳥が突然現れたぞぉおーーっ!?」  「バケモノかあー?」 「きゃあぁ〜〜〜っっ」 「いやあぁぁ〜〜っタスケテぇ〜〜っ!」

スズメは路肩に停めてある車やタクシーをつついてみたり、露店を襲ってみてポップコーンを食べたり派手に逃げる人々の周囲を飛び回ってみたりと暴れまわる。それを見て楽しそうにきゃらきゃら笑うナギサ。

「アッハッハッハ!みんな血相変えて逃げちゃっておっかしぃ〜vいいマイナスエネルギーだわ。さあ、バッドスパロウ!もっとみんなを怖がらせて心に闇を植え付けちゃいなさいっ!」

恐ろしいセリフをさも楽しげに吐いて、右往左往する人々を見ながらナギサはケラケラと笑った。




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「へぇ〜〜・・・グローリーグラウンド、魔法の世界?そんなトコがあるんだ!」

「そうなの、今その世界がさっきも言ったけど悪の魔女、メイガス・エミリーによってめちゃくちゃにされようとしてるの。それを阻止するために、ユウナちゃんやヒナタくんにセイバーチルドレンズになって一緒に力をかしてくれてるの」

「その・・なんだっけ?セイバーチルドレンズ・・?レナもそれになれちゃうワケ?」

「うん!レナちゃんならきっとなれるよ!だってあたし達フェアリーが見えるってコトはレナちゃんにもちゃんと魔力が宿っている証拠だもの。それにレナちゃんはもしかすると他のコたちにはないもっと強い魔力があるかも」

「へえーーっvおもしろぉーいっ!ねえvなりたいなりたい!やりたいやりたいっ!♪魔法つかってみた〜いw魔法使えるようになるんならレナの力どんどん貸しちゃうよぉ〜v」

「ホントぉー!?きゃぁ〜たすかっちゃう〜!ありがとうーっ」


「・・・なんか、今までと違ってエラク軽い感じのノリだな」

「そ・・そうね、こう、ヒナタくんやナナちゃんの時とはなんか根本的に考え方が違っちゃってるというか、適応力がありすぎと言うか・・・」

JTスポーツクラブ休憩室ロビーの一角。
目の前でレイアとセイバーチルドレンズのことやグローリーグラウンドの事に関する話のやりとりをする麗奈の姿を見て、イーファとウェンディは自分たちのパートナーや他のメンバー達と比べてやけに反応がいい加減で軽いノリなのにちょっとした不安を感じていた。
今までの子ども達は最初は驚き、セイバーチルドレンズの任命を断りそうな雰囲気を醸し出す子もいたが、最後はその意味と果たすべき役割の大きさをそれなりに理解し、しっかりとしたある種の決意をもってセイバーチルドレンに変身を遂げたのだ。
しかし、この麗奈という少女、最初は自分たちやグローリーグラウンドの存在を意外なほどあっさりと受け入れてくれる度量を持ちながらも、その意味やエミリーたちの野望、グローリーグラウンドに起こっている事件の重要性にはまるで理解を示していない様子。
しかも初見で「魔法使えるのおもしろそう〜、おもしろそうだからセイバーチルドレンになる〜」などとお気楽なセリフを発したのは前代未聞彼女くらいである。

あまりにもあっけらかんとした態度に、フェアリーたちの中でも割と良識のあるイーファやウェンディ、リフィネなどはちょっと疑問を感じており、その気持ちは悠奈も同じ思いだった。
しかし、心配する悠奈たちの後ろから那深と光が声をかけた。

「大丈夫やって、そない心配せんでも。オレらもおるやんか」

「ひ・・ヒカル・・くん、ナミちゃん?」

「そうよ、ま、あのコ昔からなんでもよく考えないでポンポン行動しちゃうクセあるけどさ。逆に言えば物事そんなに悪く考えちゃうこともないし、それにとっても素直で優しいコよ。ヒカルちゃんやアキちゃんがちゃんとメンドウ見ればアタシたちの力になってくれるってv」

「・・・い、いちおう、メンドウは見なきゃいけないんだ・・・」

悠奈がフォローになってるのかよくわからないフォローをする那深をちょっと冷汗混じりで見つめる。その彼女の横をルーナが横切り、麗奈の前へと進み出た。

「こんちわでしゅ〜、ルーナでしゅー。レナたん、ルーナのぱーとなーになってほしいでしゅう」

「きゃあぁ〜〜vこのコ、カワイイ〜vルーナちゃんっていうの?なになに?パートナーってどーゆーコト?」

「んっとね〜、パートナーっていうのはねぇ〜・・」

ルーナが独特の舌っ足らずな口調で説明しようとした時、突然イーファが外を厳しい目で見つめて叫んだ。

「!・・この気配・・っ」

「ん?どうした?イーファ」

「レイア!ウェンディ!この気配っ」

「え?・・・・あ!」

「感じる・・確かにっ」

「ヒナタ!みんなっ!大変だ、ジュエルモンスターの気配がするっ!」

「な、なんだって!?・・ユウナ!」

「・・・うんっ!」

悠奈と日向の言葉にその場にいたメンバー全員が緊張した面持ちで立ち上がった。しかし・・・

「??・・ほえ?ナニナニ?何があったの?」

状況を解さない麗奈はキョロキョロと急に変わった友達たちの表情を怪訝な顔で見つめていた。




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「!やっぱり・・・」

「ヒドイ・・また関係ない人たちが・・・」

レイアたちに魔力を感じる先へと案内され、悠奈たちがたどり着いたのはクラブからそれほど離れていない、オフィス街。
デパートなども立ち並び、悠奈自身ママや妹とお買い物にも来た事のある場所、そこに大勢の人たちが苦しそうな表情で倒れこんで眠っていた。思わず声を漏らす悠奈とレイア。

「!・・あ!あそこだ!」

日向が指を指す方向、ビルの上で「チュピギョォオーーっっ!」と鳴き声を上げる大きなスズメのようなモンスターがいた。
指を指した日向に反応したのか、悠奈たちを視認すると、モンスターが羽をはためかせて悠奈たちの目の前へと降り立った。


「へぇ〜、アンタたちがセイバーチルドレンズ?なによ全然強そうに見えないケド?」

そう言いながらクレープの屋台の後ろから悠奈たちの目の前に現れたのはオレンジブラウンのウェーブがかったロングヘアが特徴の可愛い女の子の姿だった。

「あ、アンタが!?」

「そ。ねえ見てよ。こんな天気のいい日にバカみたいにクソマジメに働いちゃってる人達みぃ〜んな眠らせちゃったvきっとストレスいっぱい抱えてる人達だったのね。マイナスエネルギーがスッゴイ集まってる。このぶんならエミリーさまよろこんでくれるなぁv・・で、あとはアンタたちからレイアってフェアリーを奪っちゃえば終了!任務完了ってワケね♪」

「やっぱり・・ダークチルドレンズ!」

「性懲りもなくまたこんなヒドイことしやがって・・・ゆるさねえからなっ!」

「ふ〜ん・・アンタが愛澤悠奈ちゃんねえ〜。可愛い顔してんじゃない。でも何熱くなってるワケ?バッカみたい。大体この人たちアンタにカンケーないでしょ?」

悪びれもせず、笑顔さえ湛えながら平然と言ってのける少女。悠奈はこれまでのヤツラと同じく悪辣な態度に怒りを覚える。
見た目は普通のどこにでもいる可愛い女の子なのに何が彼女たちをココまで荒んだ心にさせているのだろう?
疑問はあったがともかく今はこの倒れている人達を元に戻すことが先決だった。

「ダークスパーク!トランスフォーム!」

少女が手を上方に掲げて叫ぶと、体が赤紫の閃光に包まれる。
妖しく光るその中から現れた少女は、淡い赤紫の大きめの髪飾りをつけ、肩口部分だけを露出させた白のショールを羽織っており、下にはお腹の部分を大きくさらけ出したビキニ系のトップス。
黄色のミニスカートに腰にはリングが連なった様なベルト。白い長めのハイソックスに下はスニーカー系のシューズを身に着けていた。

「準備完了!アタシ、ダークチルドレンズのナギサっていうの。ヨロシクねvさあ、アタシとやる気なら気合い入れてかかってきなさいっ!そおれ出て来いっ!」

上着のポケットからサモンボールを取り出すと、他のメンバーのように上空へと投げる。
球が空中で静止するとそこからゲートが広がり中からグローリーグラウンドのモンスター達が飛び出した。

大きな蜘蛛のようなモンスターに、巨大ミミズ。それにナメクジのようなモンスターが群れを成して10匹前後でその場に降り立ったのだった。

「うげぇぇ〜〜・・・またキッショイん出てきたやんかぁ〜・・カンニンしてやぁ〜」

「なんで毎度毎度あんなグロイのばっか出てくんのよぉ、他にもっとなんかまともなモンスターとかいないわけぇ!?」

「ナナミ、ユウナ・・・モンスターって時点でもうまともじゃないんじゃ・・・?」

目の前のモンスターに嫌悪感をあらわにそんな悪態をつく悠奈と七海に窈狼が小さく突っ込む。そんな彼らを無視するようにナギサが悠奈たちに意地悪く言い放つ。

「えへへ・・・ラージスパイディに、ジャイアントワーム、それにジャームスラッグ。いやらしくイジメてやるにはもってこいのモンスターよ。さあバッドスパロウにモンスター達、あいつらをやっつけてついでにあのレイアってフェアリーもさらっちゃいなさいっ!」

「ユウナちゃん!」

「わかってる。そうはさせないっての!みんなっ!変身よっ!」

「OKユウナ!」
「まかせろっ!」

悠奈の号令に七海と日向が答えると、それに続くようにその場の全員が変身アイテムのケータイを構えた。



『シャイニングスパーク・トランスフォーム!』



先程のナギサとは違う眩い閃光。
桃色、赤、青、黄、濃蒼、橙、緑、山吹それぞれ違う光が辺りを照らす。その光の中から様々なコスチュームに身を包んだ悠奈たちが姿を現し、凛とした表情で少女とモンスターの群れを見据えた。


「輝く一筋の希望の光・・セイバーチルドレン・マジカルウィッチ!」
「情熱迸る勇気の炎・・セイバーチルドレン・ブレイブファイター!」
「大いなる、青き海の力・・セイバーチルドレン・ケアヒーラー!」
「闇夜を照らす輝きの月・・セイバーチルドレン・シャインモンク!」
「拳の闘気は雷神の魂・・セイバーチルドレン・ソウルグラップラー!」
「根性全開、爆裂!男気一直線・・セイバーチルドレン・ガッツストライカー!」
「大地の恵みは緑の息吹・・セイバーチルドレン・ミスティメイジ!」
「地を行き巡るは勝負の理・・セイバーチルドレン・グリットギャンブラー!」


「きゃあぁーーーーーーーっっvvv♪♪!!」


「いくよみんなっ!」とまさに悠奈が言おうとした時、背後で凄まじい絶叫が聞こえた。
一同がビックリして振り返ると・・・


「スゴイスゴイ!ウソじゃなかったんだぁ〜っ!ヘンシンしちゃってるぅ〜〜っ!みんなっ・・みんなヘンシンしちゃってるじゃーーんっ、ナミちゃんもヒカルちゃんもアキちゃんもヒナちゃんもっ!しかもしかもぉ・・・なになになになぁ〜にぃ〜?アレ!モンスター?モンスターだっ!きゃぁあ〜〜っゲームみたいっ!ホントにホントだったんだぁ〜っカァッコイィ〜〜!ねえねえナミちゃんもサラちゃんも見せて見せてぇ〜その服っ!すっごぉ〜〜いっ、きゃーきゃーきゃーww♪♪♪」

場が凍りついた。
そこには悠奈たちの後をルーナと一緒に追っかけてきていた麗奈がいた。
興奮絶頂の笑顔で悠奈たちの周りをくるくると回りながら今見た事実に感激し、悠奈たちのコスチュームをまじまじと見つめてはきゃーきゃーとやかましいくらいの叫び声を上げていた。

「ねえねえユウナちゃ〜んっこの服なに?チョーカワイイ!コスプレじゃないよねぇ?ああっvヤオくんももう超イケメンじゃんっ!うわっ!サラちゃんの服カワイイけど大胆っ!ねえねえレナも着たい着たい着たぁ〜〜いっっ」

「ちょっ・・ちょっと・・レナってばっ・・オマっ・・ついてきちゃったのかよ!?ジムで待ってろって言ったじゃねえか!」

「だぁってぇ〜〜・・みんながドコ行くのか気になるしぃ〜・・ルーナちゃんが行こうって言うしぃ〜〜・・」

「だからって・・オマエ・・なにもアタイらのこんな近くにまで・・危ねえんだぜ?」

「へーきへーき!vあ!ねえねえ、さっきのヘンシンさあ、もっかい見せてよ。ね?」

まるでTPOを弁えないこの能天気なノリに咲良が言葉に詰まってしどろもどろになる。
とうとうそれを見かねたナミが怒りながら麗奈に言い迫った。

「レぇ〜〜〜ナぁ〜〜〜・・っっアンタってコは、ジョーキョー読みなさいよ!」

「ほえ?なにが?」

「なにが?じゃないわよ!アレ見てみなさいアレ!アレがさっき話してたダークチルドレンズ!宝石からモンスターを生みだしたり、グローリーグラウンドに住んでる魔物を呼び寄せたりして、人の心を苦しめたりしてるのっ!今そこにたくさん人が倒れてるのはあいつらのせいなの!わかる?」

「うんうん!」

「じゃ、わかったら今からアタシたち戦わなきゃならないから、安全なトコ隠れてて。もう付いて来ちゃったのはしょうがないからジャマしないでっ!」

「えー!?戦うのぉ〜?なになに?ダレとぉ?どーやってぇー?きゃぁ〜〜v楽しみだねぇ〜、ね?ルーナちゃんっ!で?何がジャマなの?何隠すの?レナてつだおーか?」

「アンタがジャマなんじゃあぁ〜〜〜〜っっっ!」

「ハナシ全っ然わかってねーだろテメエーーーっっ!」

今那深がかいつまんで説明した事情をまるで理解してない天然全開、アホ丸出しの答えに那深と咲良がそれぞれ怒って突っ込む。あまりの彼女のボケっぷりに悠奈も、フェアリー達も。この星原麗奈という女の子の性格をまるで知らない人たちはただただ呆気にとられてポカンとし、麗奈を良く知る人達はハァ〜・・と溜め息をついていた。

(なっ・・・なんなのこのコ?)

今までと明らかに違う強烈すぎるキャラクターに悠奈は色んな意味で圧倒されていた。
その一部始終を見せつけられたナギサ。イライラと焦れたように靴を鳴らし、呆気にとられて固まっている悠奈に不機嫌に言葉を放った。

「ねえ、終わったの?そのくっだらないコント」

「え!?・・あ、ああ・・・さあ?・・・ってそれよりアンタ!さっさとこの人達もとに戻しなさいよっ!」

「イヤよ。なんのためにこうしたと思ってるワケ?今切ったらせっかくのマイナスエネルギーが集まらなくなっちゃうじゃん。ヤメテほしけりゃ力づくでどーにかしてみれば?」

ナギサが悠奈を小馬鹿にしたように笑い飛ばし、手を振ると周りのモンスターが合図を得たとばかりに悠奈たちに襲いかかった。


「キョアアァァ〜〜〜ッッ」   「ぴぎぎぎぎぃ〜〜〜っっ」


「来たぞっ!ユウナっ!」

「もうっ・・レナちゃん!とりあえずアブナイから隠れててっ!いくよみんなっ!」

その言葉が戦闘開始の狼煙だった。

まずは腕力の大きい光や晃、主力の2人が巨大なスズメモンスターに向かっていく。
スズメが翼を広げて素早い動きで飛びながら光と晃に嘴(くちばし)を突きつけて突進した。

「おっとっ!」

「うわっと・・っぶねえ・・・」

「コイツ速いでアキラ!油断すなやっ!」

「わかってるよっ!」

再び降下して来たモンスターの一撃を冷静に躱す光と晃。その隙をついて、武器は装着していなかったが体重を乗せた拳撃を左右からスズメの顔面に叩き込む。

「おらあっ!」

「どないやあっ!」

渾身の一撃。
ガッ!!と鋭くも鈍い音が響き、「チュピギョッ」というくぐもったうめき声を上げてモンスターがぐらついた。
その様子にナギサが「ふえっ!?」と間抜けな声を上げて驚いた。

「よっしゃ手応えあり!」
「どや?おとなしなったやろ?」

得意気な顔で光と晃が言う。しかしヨロめいたもののバッドスパロウはそのまま体勢を何とか立て直すと再び空へと飛び上がってしまった。

「ちぃっ・・まだみたいだぜ」

「飛ばれるとやっかいやなぁ・・」

2人はそれぞれ顔を見合わせてうなづくと空に向けてそれぞれ魔法と飛翔攻撃を放った。

「サイコボールッ!」
「雷の聖霊ディーン、悪しき者どもに天の裁きを下さん・・サンダーボルト!」

雷と超能力と闘気をドッキングさせた光弾が空中を疾駆してスズメに向かう。躱されるが地上から飛び道具で上空の敵を迎え撃つ2人。
その姿にナギサは「なるほど・・・この2人は強いわ」とやや考えを修正した。
しかしナギサの考えに反して活躍していたのはなにも光と晃だけではなかった。

「おぉうりゃあっ!」

「はいやあっ!」

日向と窈狼は、ジャスティスブレードとウルフクローフィストをそれぞれ召喚し、刀と手甲に覆われた拳が迫りくるクモとミミズのモンスターを蹴散らす。

「ダンシングロッド!」

「スピンアタック!」

「大いなる恵みの緑を司りし精霊フォレスティアよ、愚かなりし災いの子らへ戒めの刃を与えん・・リーフアロー!」

「大地を司る精霊ノームよ、邪なるものを汝が清き大地の剣で穿(うが)たん・・ダイヤニードル!」

日向と窈狼を援護するかのように悠奈と七海も武器を振るい、隙をついてゆっくりと襲い来るナメクジモンスターを那深と咲良が魔法の連係プレイで迎撃していく。
練習の成果なのか?ユウナたち自分自身でも惚れ惚れするような見事な連携プレイだった。
なるほど、この戦い方なら今までのヤツらが仕留め損ねてきたのもわかる。
確実にモンスターの動きを見極めながら瞬時に冷静、かつ効果的に戦うセイバーチルドレンズの面々。敵ながらナギサは彼らの戦い方に感心した。

しかし・・・

(いい気になってられるのも今のうちよ・・・)
「そぉれ!モンスターちゃんたち!なに情けないカッコしてんの?さっさとそんなコたちやっつけちゃいなよ!今、アタシが元気をあげるからv」

「え?げ・・元気?」

「元気をあげる・・って?なんだ?一体どういう意味だ?」

突如上がったナギサの意味深な叫び声に悠奈と日向が動きをとめてナギサの方を見やる。すると彼女はベルトの後ろ辺りから、恐らく武器であろう大きなチャクラムに似た武器を取り出し、天に掲げて目を閉じてなにやら呪文を唱えだした。

「天候の精霊ウェザリアよ、水の精霊ウンディーネとの盟約の元、地に豊かなる恵みを降り注がせたまえ・・レインマーシー!」

ナギサがそう叫ぶと上空に瞬く間に雲が現れ、そこから悠奈たちのもとに雨が降り注いだ。

「なっ・・なに!?」

「雨?な、なんで急に!?さっきまで晴れてたのに・・・どーなってるんだ?」

「いや・・・よう見たら降ってんのってココの辺りだけみたいやで。もしかして・・・」

「あっはっはっは!そうよ、ご名答!♪」

突然起こった気候変化に驚く悠奈と日向、七海にナギサは得意気に話し始めた。

「アタシのジョブは天候術師(てんこうじゅつし)。ウェザーテイマー!天気を自由自在に操る特殊魔法、天候魔法の使い手よ!」

「天気を自在に操るて・・・そんなコトできんのかいな?」

「スッゴぉ〜イ・・マジにそんなコトもできるんだ魔法って・・・グローリーグラウンドってやっぱり色んな意味で便利かも?」

「驚いてんじゃねえよヒカル!ナミ!考えようによっちゃ大したことねえだろ」

「アキラ?」

ナギサの魔法に少々感心していた光と那深。しかしそんな2人に晃は落ち着き払って言うと、雨を降らせているナギサを睨みつけた。

「確かに便利だけどな。オイ女!天気ってこたぁようは雨を降らせたり、晴れさせたりすることができるってコトか?」

「うふふ。そうよ、なんでも自分の思い通りの天気にできちゃうわけ。ま、範囲は限定されちゃうけどね」

「ふぅ〜ん・・ようはそれしかできねえってコトだろ?天気をコロコロ変えたって別に相手を攻撃できたりするワケじゃあねえ。つまり戦闘には不向きな魔法・・ってコトにならねえか?雨なんか降らせたってコッチは痛くもかゆくもねえぜ?」

「あーあ、なんかザンネンvさっきのバッドスパロウとの闘い見てお兄さん強いしちょっとやっかいかな?って思ったのになんか期待外れ。だってアッタマ悪いんだも〜ん」

「うっ・・うるせーなっ!テメエ見てえなガキに言われたかねえよっ!大体テメエ小学生だろ!?何年生だよ!?確実にオレより年下だろーがっ!」

「あ、アキラぁー、落ち着けってば。ムキんなったらこの女の思うつぼじゃね?」

弱点見破ったり、と意気込んで指摘してみたものの、あっさりと反論され逆に毒舌を吐かれていきり立った晃に、珍しく咲良がなだめ役に回っていた。
そんな晃を無視して、ナギサはモンスター達を相手にしていた悠奈の方を向いて彼女に余裕の笑みを浮かべながら声をかけた。

「ねえ、ユウナちゃんだっけ?アンタなにかヘンなコトに気付かない?」

「な・・・なによ?」

「今までと変わったところよ。気づかない?」

言われて悠奈は何のことかと思いながら周りを見回してみた。
変わったところ?そんなところがあるか?思い当るところなんかない。せいぜい今のナギサの魔法で当たりの天候が局地的に雨になっているだけだ。
ふと、後ろにいる七海と目があう。そのまま七海をじー・・っと見つめる。

「・・・・・」

「?・・な、なんやねん?ウチのほうじぃ〜って見て・・気持ち悪い」

「ウソ言わないでよねっ!そりゃ変身したナナミがちょっとバカっぽく見えるかもしんないケド、ナナミはもともとバカなんだから、あんまり言うといくらなんでも可哀想でしょっ!」

「おのれぁナメとんのかぁーっ!?しばき倒すでホンマーーーっっ!!」

状況の変化が全くわからず、悩んだ末に飛び出した悠奈の悪口雑言にナギサはガクッとコケそうになり、七海は当然の如く悠奈に怒声を上げた。

「ア・・アハハv冗談よジョーダン。ね?ゴメンゴメン、そんな怒んないでよ七海」

「じゃかあしいわっ!アンタにスピンアタックかましたろかコラぁーっ」

「ああ、もうっ!アンタたちどっちもバカよ!ホントに気づかないわけ?」

多少2人の人を舐めたようなふざけた態度にイラついてきたナギサにもう1度言われて辺りを見回した2人。しかしやはり雨が降っている以外は特に変わった様子は無い。
先ほどなぎ倒したモンスター達が時間とともに少し回復したのかまた気持ち悪くウニョウニョと蠢き始めたことくらいか?と、そこで窈狼が声を上げた。

「?・・あ・・・アレ?」

「?どうしたのヤオラン」

「なんかあったか?ヤオ?」

「いや・・・気のせいか?・・でも・・・」

「なんやねん、もぉ、メンドくさいなあっ!男やったら言いたいことはビシっと言いや!」

「う・・うん・・・あ、あのさあ。ソコにいるさっきみんなで吹き飛ばした魔物たちだけどさ・・・・なんか・・さっきよりちょっとデッカクなってねえ?」

「え?」

窈狼がちょっと冷や汗混じりに目の前の徐々に復活してきた魔物達を指さしながら言うと、悠奈も七海も訝しげに見つめる。
よくよく見てみれば確かにそんな気もする。クモやナメクジやミミズの気持ち悪いモンスターが水を全身に浴びながら先ほどよりも一回り大きくなったような気がするし、ゴフッゴフッ!と獰猛な唸り声をあげてより凶暴さも獰猛さも増したような気がする。

「・・・い、言われてみれば・・」

「そんな気も・・・せんこともないな」

「・・・いや・・・気がするじゃないだろ。コイツらさあ・・・」

日向も途中で気づいて思わず攻撃の手を止める。唖然とした表情の先、そこには目の前で最早目の錯覚などではなく、見る間にドンドンと大きくなっていくモンスター達の姿があった。


「マジにでかくなってるじゃねえかあぁーーーっっ」

「きゃああぁ〜〜〜〜〜っっ」

「やあぁぁ〜〜〜〜〜〜っっ」

「うわぁ〜〜っきゃぁ〜〜っキモイぃ〜〜っっコッチくんじゃねえぇーーっ!」

「ちょっと何よコレえぇぇ〜〜〜っっ」

「なんや!?」

「オイオイ、一体何の騒ぎが起きたんだ?」

スズメのモンスター、バッドスパロウと闘っていた光と晃も、突如後方から上がった悲鳴の方へと思わず視線を向けた。
見れば先ほど現れたモンスターが2倍程に巨大化し、その様子に悠奈たちが右往左往してキャーキャーと騒いでいるのが見えた。

「何してんねんアイツら・・・」

「オ〜イ、サラにナミも!何やってんだ?遊んでんじゃねえんだぜ!ちゃんとマジメに戦えよなっ!」

「あっ・・アキラのヤツぅ〜〜っ他人事だと思ってぇ〜〜っこんなキモイのが目の前で巨大化してみろよっ!寒気がして戦うどころじゃねえってのっ!ヒィ〜〜・・」

「アキちゃんもヒカルちゃんもちょっとコッチ助けてよぉ〜〜っアタシもともとナメクジとかミミズとかチョーキライなんだからぁ〜〜っっ」

と、情けなくモンスターの攻撃に逃げ惑う那深と咲良の姿を見かねて、光と晃はお互いに顔を見合わせ軽くため息をつくと、一旦バッドスパロウへの攻撃を中断し、救援に向かった。
そんな中、悠奈はモンスターからナギサへと視線を移すと、得意気な笑みを浮かべて逃げ惑う那深たちを嘲笑っていた彼女を睨みつけながら言葉をぶつけた。

「どういうコトなの?コレが・・もしかしてアンタの力?」

「ウフフ・・そう。コレがアタシの、ウェザーテイマーの自然魔法(ネイチャーマジック)の1つ、ウェザーマジック(天候魔法)よ」

「ね・・ねいちゃーまじっく・・?」

「ユウナちゃん!ネイチャーマジックっていうのは、グローリーグラウンドの魔法の種類の事よ。みんなが使っているのは魔力を触媒にして大きな力を造り出して使う使役魔法(しえきまほう)・ユーザーマジック。これは自然にある力を利用してそれに魔力を送り込んで作りだす自然魔法・ネイチャーマジックなの。その中の1つが確か・・天候魔法(ウェザーマジック)よ!」

「へぇ・・さすがグローリーグラウンドのフェアリー、良く知ってるじゃん。そう、自然の力を借りるネイチャーマジックの一番の特徴は環境変化!人も動物もこの世に生きてるものはみんな天気の影響を受けるの。当然モンスターもね」

「影響・・・って、まさかっ!?」

「そう、そのまさかよ♪やっちゃえモンスターちゃん達っ!」

那深が引きつった声で何かに気づいた時、ナギサは待っていましたとばかりにモンスター達に号令をかける。すると今まで地面でゆっくりと蠢いていたミミズやクモの化け物が俊敏な動きで悠奈たちに襲い掛かった。

「きゃあぁぁ〜〜〜っっ」

「いやぁ〜〜っミミズってこんなに動き速ないやろぉ〜?」

「その茶髪のお姉ちゃんの言う通りよ。アタシの天候魔法はその属性によって同じ属性を持つモンスター達をパワーアップさせることができるの!フィールドを有利に作りかえるのよ」

「げぇ〜、なんっつームチャクチャな魔法だよソレ!」

「そーだ!ヒキョーじゃねえかっ!」

「なんとでもいいなさい!さあ、モンスター達、アタシが元気にしてあげたんだからその子たちさっさとやっつけちゃってよね!」

「ヒナタ!コイツらさっきより手強いぞっ」

「わかってる!みんな油断するなっ!」

「取り敢えずオレ等も加勢すんでアキラ!」

「ああ、やっかいになってきやがった」

咲良と窈狼の反論を一笑に伏し、ナギサはなおもモンスターをけしかける。
正に文字通り水を得たモンスター達は先程よりも手強く、日向や窈狼の攻撃でも少々では揺らがないタフさを兼ね備えていた。
日向や窈狼に光と晃が加わった前衛。さらにソレを七海が近距離からサポート。那深が遠距離から魔法で攻撃し、その那深に近づいてくるモンスターを悠奈と咲良がそれぞれ魔法や武器攻撃で迎撃するという形になる。

膠着状態だが意識を失った人たちを元に戻すためにはバッドスパロウを倒す必要があり、このままではラチが空かない。手詰まり状態だ。
事態を打開できずに焦るメンバー達から少し離れたところで、まるで他人事のようにことの進展を見ている少女が1人。


「うわああぁ〜〜・・・vスゴイスゴイスゴぉ〜イ!ホントに見たこともないような生き物ばっかり!アレがモンスターっていうの?ねえルーナちゃんっ!」

「ハイでしゅう。グローリーグラウンドにいるモンスターでしゅー、おこるとこわいでしゅ、ルーナはモンスターキライでしゅ。こわこわでしゅ」

「うんうん!でもさぁ〜、ナミちゃんたち戦ってるよね。みんなヘンシンなんかしちゃってさあ・・いいなぁ〜楽しそう・・・レナも変身したいなぁ〜」

当の那深たちは楽しいなんて微塵も思っていないのだが、空気も読まずおちゃらけた発言をし、ちょっと物足りなさそうに不貞腐れる麗奈がそこにいた。全くもって不謹慎極まりないセリフなのだが、そんな彼女の言葉に側にいたルーナもあっけらかんとした感じで答えた。


「できましゅよ」

「え?」

「レナたんも変身できましゅよ」

「ほっ・・ほっ、ホントおぉおーーーっ!?」

意外にも簡単に帰ってきた衝撃の返答に麗奈は眼を輝かせてルーナを見つめ詰め寄った。
ルーナが得意気に続ける。

「ハイでしゅ!まりょくのみなもとは信じる心でしゅ。レナたんのなかにルーナたちや魔法を信じる心があれば変身できるはずでしゅ」

「れ・・レナが、信じる?ルーナちゃんたちを?」

「ハイでしゅ。レナたん魔法信じましゅか?」

「信じるも何も・・・もう目の前にルーナちゃんがいるじゃないっ!レナ、信じるよ。ルーナちゃんも・・魔法も、みんなっ!」

と、麗奈が自信をもってそう答えた瞬間だった。

「!・・きゃっ・・なっ、何?」

レナのポケットが眩く輝いた。何事かと麗奈が急いで確認してみる。すると麗奈の持っていた携帯電話が光り輝いており、そのままデザインが変わって手の中にあった。

「!・・こ、これって・・・?」

「やったでしゅ!それがレナたんのヘンシンアイテムでしゅぅ〜!さあ、それでこころでお願いしてみるでしゅ!レナたんの可能性を!変身する力をっ!」

(レナの・・・?)

その時、麗奈の中でドクンっと何か熱いものが弾けた。



「シャイニングスパーク!トランスフォーム!」

麗奈がそう叫ぶと先ほどアイテムに変化を遂げた携帯電話が光り輝き、濃い鮮やかなピンク色の光が麗奈の体を包み込んだ。

「なっ・・なに!?アレって・・・もしかして!?」

「そうよ・・きっとそうだよユウナちゃん!新しい仲間の誕生だよっ!」

「レナ・・やっぱりね。だと思った」

その瞬間を見ていたレイアと悠奈、那深から麗奈のその変身にそれぞれ三者三様のリアクションがあった。
光が帯状になり、麗奈の体にコスチュームを形成。あっという間に激しい光の爆発の中から変身した麗奈の姿が露わになった。

胸元が空いたセクシーとも言えるバイオレットピンクのトップスにダークブルーの二段フリルが可愛らしいミニスカート。
フワフワとした花びらのような空色のリストバンドに足には白のブーツ。
髪には星を連ねたような可愛いカチューシャをしており、両の耳には星型のピアスもつけていた。
そして手にはまた星を散りばめたようなデザインのマイクを握っており、ゆっくりと眼をあけると力強く叫んだ。


「邪悪な心を打ち消す聖なる唄声・・セイバーチルドレン・スターディーヴァ!」


「スター・・ディーヴァ!?」

「すっげえっ!レナちゃんが変身したっ!」

「やっぱりレナちゃんが9人目の仲間やってんや!」

「ルーナもパートナーを見つけたみたいだな!」
「よかった。また心強い味方が増えたのね」

現れた新しい仲間に日向と七海、イーファとウェンディが沸きかえる。その場で麗奈の変身を見ていた全員が息をのんだ。
レイアも悠奈も興奮した調子で麗奈の姿に言葉を漏らす。

「スゴイスゴイ!レナちゃんがアタシたちの新しい仲間だったのよユウナちゃん!」

「うん・・・なんか、キレイ・・」

「おめでとーでしゅレナたん!新しいセイバーチルドレン、レナたんがスターディーヴァだったでしゅ♪」

「ほえ?レナどうしたの?・・ってナニ!?なになに?このカッコ!?きゃあ〜〜〜vvホントにヘンシンしちゃってるしぃ〜〜♪ウッソー!マジでぇ〜〜?や〜んvカワイイこのカッコーv写メってあとでママに見せよーっとw」

「やっとる場合かぁーーーっ!?ちょっとは空気読みなさいよこのパッパラ娘!」

変身した事態に驚くよりも浮かれて、またしても場の空気を考慮せずにのほほんとしている麗奈に那深の激しい激が飛ぶ。そんなおちゃらけ娘に悠奈がゆっくりと近づいた。

「あ・・あのさあ、レナちゃん?」

「あ!ユウナちゃ〜んvありがとー!みんなの見てたらなんかヘンシンできちゃった!これからはレナもお手伝いできるよお」

「え?・・その、いきなり変身なんかさせられちゃってさ・・へーきなの?」

「ほえ?なにが?だいじょーぶだよ。へーきへーき!チョーカワイイじゃんこのコス!これからよろしくね、ユウナちゃん!」

麗奈がそう言って悠奈に手を差し出す。
とことん楽天的、いや、ただ単に馬鹿なのか?底抜けに能天気なのか?いささか気になる面はあったが、一拍おいた後には差し出された手を悠奈自身がっちりと握っていた。

「・・・うん!コッチこそお願いね!」

と、勝手に盛り上がられて存在を一時忘れられていたナギサがその悠奈たちの足下に向けて何かを放った。
バチイっ!という破裂音と眩しい閃光。

「きゃああぁっ」

「わっきゃああっ・・と・・な、ナニ!?」

「サンダークラウド・・・ちょっとナメすぎなんじゃない?コッチのことガン無視してくれちゃってさあ・・」

余程蚊帳の外に置かれていたことが頭に来たのだろう。
三白眼のような鋭い目つきで睨みつけながらナギサが悠奈と麗奈に迫るように言った。白く煙が上がる悠奈の足元、恐らくは魔法が直撃した痕だろう。

「おっ・・お前っ・・攻撃魔法が使えたのか!?」

「ウェザーテイマー(天候術師)が攻撃魔法を持たないとでも思ったの?バカ言わないでよね。むしろネイチャー魔法はある種の魔法においては使役魔法や精霊魔法よりも強力な威力を持つものだってあるんだからね」

窈狼の驚いたような問いを一蹴するナギサはそのまま手を上空に翳して叫んだ。

「もう遊びはおしまいにしてあげる!天候の精霊ウェザリアよ、風の精霊シロッコとの盟約の元、全地を吹き抜ける風の恵みをもたらさん・・・ウインドマーシー!」

雨の次に悠奈達の周りに巻き起こったのは吹き抜ける風であった。
ヒュオォーーッという空気の音とともに空中と大地を風の流れが一気に駆け抜ける。と、すると今度は先程まで様子を伺っていたバッドスパロウが意気揚々と悠奈達の方へと滑降してきた。

「チュッチュピギョォーーーッッ!」

「どぉあっ!」

「なっ・・なんや!?この鳥!急に妙に元気になりよったで・・・まさか・・っ!」

「アッハハ!そうよ!鳥系のモンスターは大体風が得意属性!だからアタシのウインドマーシーでパワーアップさせてあげたってワケ!さあ、今度はもうさっきみたいに行かないわよ!モンスター達!その子達コテンパンにしちゃえっ!」

腹の立つセリフに悠奈は内心ムカっときたが今は目の前の闘いに集中することにした。日向や普段おちゃらけている七海や咲良もそれを理解しているらしく、武器を手にそれぞれ身構える。
しかし、言っただけのことはあるというべきか、モンスター達が明らかに手強くなっているのだ。
スピードこそそれほど変わらないが、パワーやタフネスは先程とは比べ物にならないくらいアップしている。
必死になって戦っているが頼みの綱の光も晃も、ずっと悠奈達年下の子達を守りながら戦っていたせいなのか疲労の色が見え始めている。肩で息をしていた。

「くぅ〜〜・・っアカン・・コイツらなんちゅうしぶとさや・・」

「このままじゃラチが空かねえぜ。なんとかしねえと・・・」

「ハアッ・・ハアっ・・ヤオラン、まだ戦えるか?」

「何言ってんだよヒナタ・・ハアッ・・ハアッ・・オレの心配なんかするな。まだまだいけるぜ!」

召喚モンスターだけならいざ知らず、先ほどのジュエルモンスター・バッドスパロウもパワーアップしている。
急降下、急旋回からの攻撃だけでなく・・・

「うわああぁっっ」

「だあぁっ!?アブなっ!なっ・・なんやねん!?」

「ひえぇぇ・・アキラくん・・コレって・・・あのモンスターの羽根じゃねえの?道に刺さってる・・」

「ちっきしょお・・あの鳥ヤロー!こんな攻撃までしてきやがるのか!?ジョーダンキツイぜ。ったく・・」

何と自分の大きな翼から羽根を矢のように飛ばして攻撃してくる新たな闘い方も見せてきている。
その様子に、徐々に顔に焦りが見られる4人。

前衛のメンバーがみんな疲れている。こんな時どうしたらいい?
悠奈も七海も、那深も咲良も途方に手強いモンスターを相手に途方に暮れようとしていた時だった。

「よぉ〜〜っし!レナも魔法使ってみよぉ〜〜っと!♪」

不意に傍らで見ているだけだった麗奈がズンズンと前に進み出てビッとナギサとモンスターの群れに指を突きつけて自信満々こう言い放った。

「コラッ!そこの悪いコとお付きのモンスターちゃんたち!レナが出てきたからにはも〜悪いコトはさせないんだかんねーっ!」

「はあ?ナニ?ダレよアンタ・・今のジョーキョーわかってんの?バカみたい・・」

「ちっ・・ちょっとレナちゃん!なにしてんねんなっ」

「いきなり何言ってんのよ!アブナイから下がってなさいってば!」

「あーなによーっナナちゃんもナミちゃんもそんなコト言っちゃってぇ〜へーきだよ!レナだってヘンシンできたんだからっ!」

「いやいや・・・アンタあのコの顔見てみなさいよ。もうカンっペキにアンタのテンションに引いちゃってるわよ?」

那深に言われてナギサの方をチラリと見る。
いきなり出てきてこの空気の読めない女は一体何なんだ?というような冷めた反応がありありとわかった。それだけではない。
七海も、晃も光も、挙句には咲良までもが「危ないから下がってろ」と言ってくるのだ。しかしこの扱いに不満を爆発させた麗奈は大声で叫んだ。

「だいじょーぶだもんっ!ルーナちゃんにも言われたもん!レナにだって魔力があるって、ちゃんとレナだけの魔法が使えるって!よ〜し・・見せてあげるからねぇ〜・・カモン!♪ルーナちゃん!」

「ハイでしゅっ!♪」

麗奈が呼ぶとルーナが答えて麗奈の上へと飛んでいく。
そのままキラキラと光を帯びながら麗奈の周りをルーナが飛び回ると麗奈の体に魔力が充実していく。そして麗奈はそのまま自分の足元で軽やかにステップを踏み出した。まるで楽しくダンスを踊るように。

「な・・なんなのよ一体・・もう!ホントに人のコト馬鹿にしてるわね、一気に叩いちゃいなさい!バッドスパロウたち!」

自分を無視して妙な踊りを踊り始めた麗奈にナギサも声を荒げ、モンスター達に突撃命令を下す。モンスターもここぞとばかりに群れを成して一気加勢に攻め立てようと麗奈に向かって踊りかかった。

「あぶないっ!」

「レナあっ!」

空気を切り裂く悲痛にも似た那深と日向の叫び。
しかし、次の瞬間、麗奈の体は襲い来るモンスター達の間をまるで花びらが舞うように優雅にすり抜けた。

「なっ・・かわした!?ちっ・・ちょっと何よ今の!?」

「す・・スゴイ・・」

ナギサも、そして悠奈もそのあまりに華麗な体裁きに思わず声を漏らす。
麗奈のステップはモンスターの攻撃を躱した後も止まらない。そのままステップのリズムが激しくなるとそのまま麗奈は楽しそうな笑顔を湛えてこう言い放った。

「みぃ〜んなもりもりパワーアーっプ!エキサイトダンス!」

「エキサイト・・ダンス?ってナニ!?ちょっと、この光って・・・アレ?」

「ん?あ・・アレ?なんだコレ?」

「きゅうに・・・体が熱くなって・・なんだか、体の奥から力が沸き起こってくるような・・」

「・・ど、どういうコトだ?こりゃあ一体・・・」

麗奈の体から赤に近いオレンジ色の光が発されたかと思うとソレが悠奈たちに降り注ぎ、その直後体の奥から熱い何かが込み上げて来て、メキメキ力が沸いてくるのがわかった。
日向や窈狼、晃や他のメンバーもそれを感じたらしくしきりに自分の体を見て不思議そうにしている。

「うおおぉーーっ!そりゃあパワーアップの魔法だぜ!アキラ!」

「ぱ、パワーアップだぁ?」

「ユーザーマジックの中にいくつかある身体能力向上の魔法だぜ!スゲエぜ!やったなヒナタ!まさかあのコこんな魔法が使えるなんて・・・」

バンとイーファが興奮したように説明する。どうやらコレが麗奈の魔法の力らしい。麗奈自身も驚いたらしく、自身の手を見回して目を丸くしている。

「スゴイ・・・頭や体に自然に力が沸いてきて、気がついたら踊ってた・・・コレが?」

「そうでしゅレナたん!コレがレナたんの魔法の力でしゅ!スゴイでしゅぅっもっともっといくでしゅー♪」

「よぉ〜し!やっちゃうもんねえ〜っ」

麗奈の気合いの声に再び戦意を奮い立たせるフェアリーとセイバーチルドレンズの面々、ウェンディ、ユエ、ヴォルツ、リフィネ、クレアもそれぞれパートナーを鼓舞し力を与える。

「今がチャンスよナナちゃん!がんばって!」
「よぉ〜し、見とれよぉ〜」

「ヤオラン!パワーアップは力の魔法だよ、今が攻撃のチャンスだ!」
「いよし!見せてやるぜ、オレのワイルドウルフコンビネーションを!」

「ヒカル、ほなワイらもボチボチいこか?」
「おう、なんやオモロなってきたわ!」

「ナミちゃん!出番よ!攻撃魔法でみんなを援護して!」
「言われなくてもそのつもりよリフィネ!まかせて!」

「サラちゃん!ダイスルーレット!」
「OK!まかせときなっ!」


「アイススパイク!」

「ワイルドウルフコンビネーション!」

「雷靭拳!」

「リーフアロー!」

「ダイスルーレット!・・・セブンダイス!ルビーシャワー!」

魔法と直接攻撃の波状攻撃がモンスター達を襲う、氷の刃、散弾銃のように乱れ飛ぶ拳、雷を纏った鋭い拳打、風を巻いて喰いかかる緑の矢、光輝く宝石の雨霰。
嵐のような連携技を喰らってモンスター達はあっという間に大ダメージを受け、宝石を残して消滅し、残るはクモのモンスターが2体のみとなっていた。

「よっしヒナ!行くぜっ!」

「うん、アキちゃん!」


「アニキとジョー兄直伝・爆裂拳!」
「百式・鬼焼きぃっ!」

すかさず怯んでいるクモのモンスターをグラブを装着した晃の拳の乱れ打ちと日向の炎を纏った斬撃がそれぞれ吹き飛ばし、切り裂いた。
後には宝石を残してそれぞれモンスターは消滅。残るはバッドスパロウただ1体だけとなった。

「なっ・・・なんなのよ・・さっきと全然動きがちがうじゃないっ」

これも今覚醒したばかりの新しいセイバーチルドレンズの力だというのか?
まさに炸裂したセイバーチルドレンズの怒涛の攻勢にナギサはひどく狼狽し、顔色も失っていた。
しかしここで退くわけにはいかない。サキやジュナの前であれだけ大きな啖呵を切ったのだ、ここでなんとしても成果を上げねばこんな無様なことはない。
ナギサは再び意を決するともう一度天に向かって手を差し伸ばすと呪文を唱え、再び突風を巻き起こした。

「きゃっ!」
「やっ!・・ま、またこの風っ・・・ちょっ・・ヤメえやあっ!ナナちゃん怒るでホンマっ!」

「もう許さないからねっ!アンタたちギタギタにしちゃうんだからっ!さあ、バッドスパロウ!この風に乗せてアンタの得意技撃つのよっ!」

ナギサの命令に反応したバッドスパロウ。突風が追い風となる中、翼を羽ばたかせて羽根の弾丸を打ち出した。
追い風の影響もあってか、先ほどよりも速いスピードで悠奈たちへと襲い掛かった。

「ヤバイっ!ヒナタ!あの攻撃だっ」

「みんなっ!避けるんだっ・・伏せろぉーっ!」